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蜂蜜エッセイ応募作品

初恋は蜂蜜レモンの味

藤田徹郎

 

 私の子供は航(こう)と言う名前である。大海原を勇敢に航海するように、丈夫で器の大きな人間なって欲しいと願いつけた。名前とは真逆に、航は体の弱い赤ちゃんだった。
 乳児喘息をわずらい、入院、点滴の繰り返しだった。
 三歳になり、幼稚園に入る頃になると体が大きくなるとともに、喘息がでるのは少なくなった。
 おなじ「さくら組」に知恵ちゃんという、時々喘息がでる女の子がいた。
 変な話だが、同じ病気を持った同士二人は仲良くなった。
 知恵ちゃんは必ず家から、蜂蜜につけたレモンの切ったものを持ってきた。航が、
 「それはなに」
 と聞くと、
 「知恵の魔法のくすり、甘くて、おいしくて、体にもいいんだよ」
 と言って航に一枚渡した。
 「甘くておいしい、ぼくこれ大好き」
 と言った。そんな感じで、仲良しになり二人は毎日どちらかの家で遊ぶようになった。
 私が休みの水曜日、二人は私の家で遊んでいた。知恵ちゃんが私のところに来て、
 「航くんのパパ、知恵大人になったら航くんのお嫁さんになってもいい」
 と言ってきた。航も、
 「ぼくも知恵ちゃんと結婚したい」
 と言った。
 「もちろんいいよ、でもその前に喘息を完全に治してからだね」
 と言うしかなかった。
 それから年月が経ち、二人とも体の成長とともに喘息は全くでなくなった。
 今、二人とも二十歳、相変わらず仲はいい。しかし、結婚するかというと首をひねる。きっと本人たちは、幼稚園の時言った、あの言葉は忘れている。
 ただ、二人の初恋は確実にあの時である。と時々タバコの吸い過ぎで、のどの痛みをとるために、蜂蜜につけたレモンを食べている私は思う。
 「ああ、これが初恋の味か」
 と言いながら、、、、、、。

 

(完)

 

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