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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

繋いでくれるもの

小梅

 

 旅行先でスーパーを見つけると、つい寄ってしまう。
 その街のスーパーに行けば、見慣れないものと新しく出会うのだ。
 その土地で採れた旬のお野菜や果物、ご当地ブランドの調味料コーナー、それに豊富なお惣菜。
 見慣れている食材のようで、パッケージが異なっていたり、その街限定のものであったり。
 旅行先のスーパーは普段のそれとはと違う空間を楽しめる。それと同時にどこかで日常を感じるような安心感を与えてくれるような気がする。
 先日は恋人と東京の旅へ出かけた。観光名所の近くの駅を降りると、なにやら賑やかな雰囲気の店と巡り合った。駅を出てすぐにあるそこは東京の小さなスーパー。お店の前に陳列されている果物は夕日の光を浴びてより一層輝いていた。店内に入っていろいろと見ているうちに、調味料コーナーに辿り着いた。まるでスポットライトにあたる女優さんのように、LEDに照らされた商品たちが並んでいる。
 この中から自分へのお土産を買おう。そう決めて、数ある選択肢の中からいくつかを選ぶことにした。
 その時、母が好きな歌手のBGMが店に流れていたからだろうか、ふと、
 離れて暮らす母のことをを思い出した。
 高校生の頃、冬になるとよく母はあるホットドリンクを作ってくれた。
 勉強の合間にと、おぼんにホットドリンクとお菓子を添えて部屋まで届けてくれたのだ。そのあるホットドリンク―「しょうが蜂蜜レモン」は学校の講習や部活で疲れ果てた体をぎゅっと温め、癒してくれた。
 あの味がむしょうに恋しくなった。
 東京の小さなスーパーの中で、私は実家に居た頃の記憶を蘇らせるように
 蜂蜜を買い求めた。
 大学に進学すると同時に実家を離れ、もう二年が経とうとする。
 一人暮らしをしていれば、時々誰かの作ってくれた温かい食事が本当に恋しくなる。
 そういう時、その温かい食事を作ってくれる誰かというのは母のことなのだと気づく。
 旅行から帰ってきて、。東京で買った蜂蜜で”しょうが蜂蜜レモン”を作った。蜂蜜の柔和な甘みが体の奥深くに伝わって、抱きしめられるように温めてくれる。ああ、この味だ、そう懐かしく思った。
 あのホットドリンクは、母との、家族とのフィジカルな距離が遠くなっても、
 私たちの心をいつも繋いでくれるような気がする。

 

(完)

 

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