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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

小さなしあわせ

立野ネコ

 

休日の朝。いつも通りの時間に目を覚まし、カーテンを開ける。どんよりとした曇り空。ラジオをつけて、ラジオ体操をすると体がだんだんと起きてくる。
ラジオ体操が終わり、コップ1杯の水を飲む。いつも通りの朝。
それなのに、外の曇り空のように心がどんよりとしていてすっきりしない。なにか悲しいことがあった訳でもないのに、なんだかぽつんと1人取り残されているような感覚になるのとがあるが、その日が今日来てしまった。
このままじっとしていたらズルズルと心の沼に沈んでしまう。
ぐっと力を入れて立ち上がる。
「フレンチトーストを作ろう。」
朝にぴったりのお気に入りのゆったりした曲をかける。
エプロンの紐をぴしっと結び、料理を始めよう。
卵と牛乳、砂糖を混ぜて卵液を作る。そこに分厚く切ったパンを浸ける。少し時間をおいてしっかりと染み込ませる。フライパンに火をかけ、たっぷりのバターを入れる。じゅわっとバターが溶けて部屋中に香りが広がる。
そこにパンを入れこんがりと焼き色がつくまで焼き、焼き上がったフレンチトーストをお皿にのせる。
いつもならもう完成だけど、今日は違う。自分を元気にしてあげないといけないから特別に、上から蜂蜜をかける。
とろりと蜂蜜がかけると、フレンチトーストがきらきらと輝き出す。コーヒーも淹れて、「いただきます。」
パンにしっかり染み込んだ卵の味、ふわりと香るバターの香り、蜂蜜の優しい甘み。私は私を喜ばせる方法を知っている。こういう小さなしあわせを自分にプレゼントしながら一日一日を大切に過ごしていく。

 

(完)

 

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