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蜂蜜エッセイ応募作品

世代を超えて

中村 聡

 

 何か面白いことはないかとインターネットで検索していたら、エッセイ公募記事を見つけた。ふーん?蜂蜜エッセイか。最近文章を書く機会も少なくなったので、一丁頭の体操がてらトライしてみるか。とりあえず、エッセイに盛り込むネタを考えねばならぬ。

 「痛っ!」幼稚園に通っていた頃、長靴に足を入れた際、中に潜んでいた蜂に刺された思い出。小学生の頃、クヌギ林で大きなカブトムシを見つけた。そのすぐ横に、これまた大きなスズメバチがいて、泣く泣く手を出せなかったこと。給食のパンに時々ついてくる、スティック容器に入ったはちみつをチューチュー吸うのが楽しみだったこと。会社員になって、公私ともに面倒を見てくれた先輩の自宅に遊びに行ったとき、生まれて初めて蜂の子寿司をごちそうになったこと。(それ以来、あのじゃりじゃりした食感の寿司を食べる機会はない)キャンプに行ったとき、蜂に刺されて大泣きした長男のこと。この時は、親子して同じようなことをしているなぁと苦笑いした。いろいろ思い出をたどると、「痛い」と「美味しい」がミルフィーユ生地のように重なり合っていた。

 最近長く勤めた会社を辞め、まったく違う業界へ転身した。転身には少し勇気が必要だったが、日々楽しく充実した日々を送っている。しかし、やはり慣れない環境に対処することによるストレスもあったのだろう。身体に変調が現れた。滅多にできない口内炎に悩まされるようになったのだ。インターネットで「口内炎治療法」と検索すると、「はちみつを塗る」という文字が目に入った。と同時に、思いがけず父の顔がよみがえった。
私が幼い頃「口内炎が治る」と言って、はちみつを塗ってくれたのは父だった。「舐めちゃだめだぞ!」と念を押されたが、外から見えない口の中のことである。舐めてしまえばこっちのもの。何度か叱られながらもはちみつを塗ってもらうと、じきに口内炎は治った。父が亡くなって20年近く経つが、いままで一度も思い出すことのなかった記憶である。当時は今のように何でもすぐに調べられる環境ではなかったはず。「口内炎治療にはちみつ」という生活の知恵を、父はどのように知ったのだろうか。そういえば、父がどのような子供時代を過ごしたのか聞いたことがなかった。もしかすると父も私と同じような経験をしていたのかもしれない。

 「口内炎にはちみつ」と伝えるには、私の子供は大きくなり過ぎた。もし孫を授かることが出来たら、孫の口内炎にははちみつを塗ってやろう。私の子供時代の思い出話を添えて。

 

(完)

 

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