はちみつ家 > 蜂蜜エッセイ

ミツバチと共に90年――

信州須坂 鈴木養蜂場

はちみつ家

Suzuki Bee Keeping

サイトマップ RSSフィード
〒382-0082 長野県須坂市大字須坂222-3

 

蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜トースト美味しいよ!

吉 哉郎

 

恥ずかしながら、蜂蜜の味を知ったのは彼女と付き合い始めた頃だったと思います。貧乏所帯で育ち、学生時代は苦学生、社会人になって土木会社に就職しての寮生活。はっきり言って、蜂蜜などという恐れ多いセレブの雰囲気のする食い物とは無縁の世界で生きてきました。少々大袈裟ですが、私にしてみればそれほど蜂蜜というものは別世界のものだったのです。これからの話は下世話ですが、寮生活を卒業して数年後、彼女ができてからの話です。何だかんだで縁があり、彼女のアパートで一夜を共に過ごした翌朝、「何もないけど、トースト食べる?」と言われ、昨夜からの一連の流れの中、夢見心地で小さなテーブルにつきました。するとテーブルにあったのは、ほんとに一枚のトーストとインスタントコーヒー一杯。「ごめんなさいね。私も給料前で何も無くて…」すると彼女が、程よく焼けたトーストにナイフでツンツンと切れ目を入れて、上から蜂蜜をトロッとかけてくれたのです。トーストに蜂蜜が沁み込んだ頃を見計らって「さあ召し上がれ!おいしいよ!」と勧めてくれました。そのトーストの美味いこと、昨夜からのシチュエーションと蜂蜜の甘さが相まって至福の時でした。「マーガリンでもあればよかったんだろうけど…」彼女の精一杯のはにかんだ様な笑顔が眩しかったことを昨日のことのように思い出します。その彼女が今の妻、娘三人社会に送り出し、私も定年まで勤めあげ夫婦二人だけの慎ましい生活が始まっています。今朝も「マーガリン切れちゃった。蜂蜜トースト美味しいよ」妻の決まり文句、当時と違うのはハムエッグと温野菜が脇を固めていること。妻の年季の入った笑顔と少し高級感の増した蜂蜜は、今でも私を暖かく包み込んでくれています。

 

(完)

 

蜂蜜エッセイ一覧 =>

 

蜂蜜エッセイ

応募要項 =>

 

ニホンミツバチの蜂蜜

はちみつ家メニュー

鈴木養蜂場 はちみつ家/通販・販売サイト

Copyright (C) 2011-2024 Suzuki Bee Keeping All Rights Reserved.