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蜂の子の御馳走

梶の木

 

 コロナ禍で親族の集まりもとんとなくなった。ワクチン接種が終わった後も、高齢者がいるからと正月の集まりも流れてしまった。画面越しに顔を見て話ができても、何か心に物足りなさがある。味気ない、そんな時間が積み重なる。
正月の集まりの中止が決まり、今年も祖父母と食事ができないと知った時、ふと幼い頃に祖母が作ってくれた御馳走を思い出した。それは、蜂の子を使った押し寿司だ。
子供にも食べ易いよう細かく切られた椎茸や筍、鮮やかな桜でんぶに錦糸卵。他にも様々な具材が使われ、とても手の込んだ、豪華な一品だった。その具材の一つに、蜂の子の佃煮が使われていた。蜂の子の大きさは小指の爪ほどで、恐らくクロスズメバチだったろう。祖父母の手前、顔には出さないよう気を付けていたが、初めて見る珍妙な食材に私は内心ドキドキしていた。
大人になってから知った事だが、蜂の子を使った寿司は海なし県の一部では祭事に振る舞われるほどの御馳走で、特にクロスズメバチの蜂の子は一級品だと言う。そんな品を、祖父母は私に出してくれたのだ。
食べてみれば蜂の子は絶品だった。甘く、それでいてくどくなく、酢飯に良く合った。しかし、子供だった私は蜂の子の顔を見ては奇妙なと思い、一口食べては美味いと思い、また寿司を見つめては、と実に忙しない、失礼なガキンチョだった。
あの時、素直に美味しかったと伝えていれば良かったと思う。豪勢な、手間のかかる料理が嬉しかったと。会食制限を要する世の中になるとは、想像すらしていなかった。人の時間は有限だ。せめて、直接会って、蜂の子の押し寿司のレシピを教わりたい。

 

(完)

 

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