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蜂蜜エッセイ応募作品

おかあさんのクッキー

マリコ

 

小学2年生の時、友達だった男の子が、遠くへ引っ越すことになった。その子はスポーツ系、私は文化系で、真逆だったけれど、いつも放課後には遊ぶ仲良しだった。 
一緒に遊ぶ最後の日に、おかあさんからの提案で、うちの家でクッキーを作ることになった。 
材料は、小麦粉と卵、砂糖などに、味付けとしてハチミツとレモンを加える。とてもおいしそうな組み合わせに、私たちはとてもうきうきしていた。 
おかあさんが分量を調整してくれて、2人で混ぜる作業をした。手を動かしながら、ボードゲームや川遊びをした思い出話をして、みんな笑顔になった。 
しばらくすると、手はベトベトになった。けれど、部屋中に甘い香りが広がっていた。「よしっ!」と2人で気合いを入れ直して、一生懸命こねた。 
オーブンに入れてからは、いすにのっけた足をぴょんぴょんさせながら、ずっと中をのぞいていた。おかあさんは「2人とも、気をつけんと火傷するで」と笑っていた。 
30分ほどして取り出すと、こんがりと焼けたクッキーが登場。「初めての手作りクッキー。どんな味だろう」とわくわくした。 
ミルクを入れてもらって、3人で「いただきます!」。すると、「ガリッ」と大きな音がした。 
ガチガチのレンガみたいなクッキーだった。後で知ったことだが、おかあさんはあまりお菓子作りが得意ではなかった。 
私が「おかあさん、これ…」と見上げると、「ちょっと…かたかったかなあ」と困った表情。しかし、友達は「うまい! うまい! おばちゃん、ありがとう」と、バリボリとうれしそうに食べていた。「俺、ハチミツレモン大好きなんや」 
友達が帰ってから、からっぽになった皿を見て、「あの子、いい子やなあ」と、おかあさんがつぶやいた。 
私もマネして、自分の残りの分をバリボリと食べてみた。かたさの後には、レモンの酸っぱさとハチミツの優しい甘みが、ほんのり残った。

 

(完)

 

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