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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

黄金色のホットケーキと巣蜜

豆腐

 

幼い頃、はちみつが好きだった。
母親が朝から作ってくれたホットケーキにはちみつをたっぷりかけて食べるのが特に好きだった。
 黄金色のとろっとした液体がしっかり染み込んだ生地を口いっぱいに頬張って食べる。
 砂糖とはまた違ったじんわりと広がる甘さが私のフォークを進めていた。
 そんな私が少しだけ、はちみつに対しての見方が変わったことがあった。
 それは偶然立ち寄ったお店であったことだ。
 お店の前で巣箱から蜂の巣を取り出し、巣蜜を採取していた。
 私はまだはちみつが何からできているのかを理解していなかったため、ぎょっとした。
 どうやら試食販売のようで気前のいい店員さんに手渡され、おそるおそる口に運んでみる。
 味は知っているはちみつに近い、しかし当たり前だが食感は違った。
 その食感に当てはまるものがぱっと思い浮かばず、なんとも形容しがたいものだった。
 私はなんだかとんでもない物を食べてしまったような気がしてならなかったのを覚えている。
 蜂の家を食べてしまったのだ。
 家を食べたというとなんだかヘンゼルとグレーテルのようだが、あの二人のように餓死しかけていたわけでもない。
 お菓子の家よりもよっぽど小さくこじんまりとした木の箱に入った蜂の巣は鮮明に覚えている。
 口に残る六角形の破片を舌で転がしながら、幼いながらに罪悪感のようなものを感じたのだったと思う。
 今でも巣蜜のかけらが口に残っていた感覚を少しだけ覚えている。
 それから私は蜂蜜を避けるようになった。
 蜂蜜のないホットケーキはほんのり甘く、ふわふわとしていた。
 そんな事があってから数年経つと、ある疑問が浮かんできた。
 肉や魚は当たり前のように食べるのになんで蜂蜜を避けているのだろうと。
 家を食べてしまったという罪悪感から?
 しかし肉や魚に至っては命を頂いている。
 そう考えた後、私は以前のように蜂蜜を食べるようになった。
 数年ぶりの蜂蜜は優しくじんわりとした甘さだった。
 今ではもう朝からホットケーキなんてこともなくなってしまい、蜂蜜を口にする機会が減ってしまった。
 お菓子を作るときにほんのちょっと使うぐらいで、使おうと取りだせばレンジで少し温めなければいけないくらいには棚の奥で静かに出番を待っている。
 だからこそ時々食べたくなる。
 琥珀色の液体が生地に染み込んで、噛むたびにじんわりと甘さが広がる蜂蜜がたっぷりとかかったホットケーキを。

 

(完)

 

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