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母の思いとポニョジュース

蜂蜜花梨

我が家には『ポニョジュース』なるものが存在する。ジブリ映画【崖の上のポニョ】でのワンシーンで、ポニョが主人公の宗介くん家にお邪魔して、体を温めるために宗介くんの母親リサが出した蜂蜜入りの飲み物に似ていたため、子どもたちが名付けたのがきっかけだ。子どもたちが成長してからもずっとそのネーミングが続いている。

その『ポニョジュース』は、子どもたちが体調を崩しそうになる時にだけ登場する特別な飲み物であり、体調に違和感を覚えた初期症状の頃に飲むことが大事なのだ。
内容はとてもシンプル。カリン蜂蜜大匙1杯と大分県の特産品であるカボス1個とお砂糖少々にお湯を注ぐだけ。カリン蜂蜜とカボスの効能が相俟って飲むだけで体は温まり、喉の痛みは軽減され、咳も緩和されるから不思議である。

このレシピは母から教わったもので、私が子どもの頃、季節の変わり目によく喉を痛めていたので、その度に母が作ってくれていたのだ。
砂糖の分量が目分量の適当な母でもあったので、甘かったり、少し酸っぱかったりして…今回のはどっちだ？と思いながら飲んでいた頃が懐かしい。
でもそれを飲むとぐっすりと眠れ、翌朝には症状が落ち着いていたのは今でもはっきりと覚えている。

そして時は流れ、私が母になり、子どもたちに用意してあげられるようになった。母と同じように作っているつもりなのだが、味が微妙に違う気がして、それが何故なのかは今でも分からない。
でも、子どもたちは気に入って飲んでくれているから良かった！

子どもたちが小さい頃は私が異変を感じた時に飲ませていたが、最近は体調に違和感を感じたり、初期症状かなと自分たちで自覚した時に言ってくれるようになった。子どもの成長を感じ嬉しくもあるが、それと同時に作る頻度は少なくなってきた。喜ばしい事ではあるのだが、ちょっぴり寂しい気持ちが行ったり来たり。
具合の悪そうな顔が飲むたびに「美味しい！」と可愛らしい笑顔になる子どもたちの顔を見れるのは、あと何回なんだろう。
母も同じ気持ちだったのかなと、減りの少なくなったカリン蜂蜜の瓶を見つめながら思いを馳せている今日この頃である。

（完）