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蜂蜜エッセイ応募作品

ゆずはちみつティー

ウォンバットのドン

 

行きつけの美容院。今日は雨がふっているからか客はまばらだ。
カラー剤を頭に塗られ、ツンとしたにおいに目がしょぼしょぼした。
「お飲み物いかがしますか?」
カラーをすると、着色している間に飲みものをだしてくれる。私は心の中できたきたと思いながらも平静を装った。美容師さんが見せてくれた小さなメニュー表を、一応さっと見てどれにようか迷ったふりをした。
「えーと、じゃあこのゆずはちみつティーのHOTで」
数分後、美容師さんがカップとティースプーンをもってきて私の目の前においた。ゆっくりとカップを口に近づけると柚子の爽やかな香りがふわっと広がった。そのまま一口飲む。蜂蜜の柔らかい甘さが柚子の爽やかさとなじんだ。あー美味しい。底のほうに溜まっているはちみつをティースプーンでかきだす。そのまま口の中にいれて舌で上顎ににゅっとはちみつを押しつけると、喉の奥から鼻のほうへ芳醇な香りがより強くひろがった。奥歯で噛んだ柚子の皮からはちみつがしみでて、口の粘膜から心に染み入った。美味しいを通り越してもはやありがみを感じる。
目の前の鏡に映る、てるてる坊主のような格好をした自分と目が合った。美味しいものをのんでわかりやすく顔が晴れやかだった。
カラーとカットが終わり、てるてる坊主を脱いだ。綺麗に染まった髪に手櫛を通すと、サラサラな髪が指をなでた。
外は雨があがっていた。

 

(完)

 

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