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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

ミツバチさんへの恩返し

船山直子

 

 ハチミツとの出会いは、幼い日にホットケーキを食べた時だった。昭和30年代、ハチミツは貴重なものだったように思う。ガラスのビンに詰められた透明な黄金色の物体は、まるで宝石のように輝いていた。母が厳かな手つきで掬い、ホットケーキの上の四角いバターの周りにそっと垂らしてくれるのを、私は息を止めて見守っていた。窓からの午後の柔らかい日差しが銀色のスプーンに反射すると、ほわっとまばゆい光が生まれた。「まるで、太陽の宝石みたいだ」そんな言葉が自然とこぼれ出た。 
 どんなふうにしてはハチミツが出来るのか、本を読んで知った時、私はとてもショックを受けた。ミツバチたちの惜しみない誠実な労働、自然という壮大な舞台でのドラマ、季節や花、雨、太陽とのふれあい。彼らの命ともいえるものを大切に集める人たち。そうやって、長い手間と時間をかけて私たちの元に届くのだということ。その美しい黄金色の一滴一滴にはミツバチの魂が込められていると分かってから、ハチミツは私にとって崇高なイメージの特別なものになった。それまではブンブンとうるさくて怖かったミツバチにも、優しくなってみようと思った。 
 今もハチミツものには自然と目が行く。様々な花の香りのハチミツはもちろん、お菓子やプロポリスなどの健康食品、石鹸、化粧品。あの優しい色合いと香りが傍にあると、気持ちが癒されてゆく。このような恩恵をふんだんに享受できることを有難く思う。 
 ただ、ふと思う。私たちはちゃんとミツバチに恩返しをしているのかなと。最近はミツバチが少なくなった、いなくなったといったニュースを時々耳にする。欲しいもの、必要なものだけを受け取って、相手を思いやることなく、軽視したり追い詰めたりするのは搾取と同じだ。環境問題などに関して、私は正直少し遠くから眺めていたけれど、このミツバチ問題は、「ちゃんと何かしないといけないんだな」と正面から思えるきっかけになった。 
 花や緑を育てる、空気を汚さない、ごみを増やさない、自然を大切にする。どんな小さなことでもまず始めようと思う。ミツバチ一匹一匹が美しく豊潤なハチミツを生み出すように、人も一人ひとりが動き出せば、どんな壮大な願いも成し遂げることができるはずだから。 
 ハチミツとの出会いからミツバチの仕事を知って、前向きな想いはどんどん拡がってゆく。結構時間はかかってしまったけれど、すべての出会いに感謝です。

 

(完)

 

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