はちみつ家 > 蜂蜜エッセイ

ミツバチと共に90年――

信州須坂 鈴木養蜂場

はちみつ家

Suzuki Bee Keeping

サイトマップ RSSフィード
〒382-0082 長野県須坂市大字須坂222-3

 

蜂蜜エッセイ応募作品

蜂の謎

鈴木 核等

 

 私が小学校低学年のころ、家の中に一匹の蜂が入ってきたことがある。母親に助けを求めると、どこからかハエ叩きを取り出して倒してしまった。そうして幼い私は安心することができたのだが、その後も別の蜂が何度も現れ、いつのまにか毎日一匹は出会うというほどの頻度となった。流石におかしいと父親が家中を探したところ、屋根裏に巣が作られていたため、ハチの巣駆除業者に電話した。
 週末、業者の若い男が来ると、ハエ叩きで潰したばかりの死骸を見せた。「あー、アシナガバチですね」。両親と業者の話を聞いていた私は、なるほどこれがアシナガバチか、と思った。続いて父親が業者を屋根裏の前まで案内する。巣の駆除が始まるのだ。
 危険を避けて私や母親は外に出て様子を窺っていた。どうなることかと思っていると、案内を終えた父が玄関から姿を現した直後に業者も出てきて「うちじゃ手に負えません」と話して帰ってしまった。去り際に、その道でよく知られたハチ取り名人の電話番号を残していった。
 他に方法もないので名人に電話をすると、次の日には優しそうなシワ顔のおじいさんがやってきて、一言二言話した後で私たち家族に「外で待っていてください」と言う。家の前の道路に出て、しばらくの間、家族そろって腕組みをしていた。作業を進めているのではあろうが、特に外まで音が響くこともない。うまくいくだろうかと思っていると、おじいさんが玄関の扉から顔を出した。「もう入って大丈夫ですよ」。玄関で父親とおじいさんが話をして、危険はないとのことだったので私と母親も玄関に入った。そこにはゴミ袋に詰められた、五十センチメートルほどの茶色い巣があった。その圧倒的な大きさに驚いたことを覚えている。
 大人になってみて記憶を振り返ると、あのアシナガバチの巣にはハチミツがあったのだろうかと気になる。だが、もはや手元には巣がない。大きかったためか、名人が「良ければいただきたいのですが」と言うので渡してしまったのだ。
 好奇心に任せて『アシナガバチ ハチミツ』で調べてみる。だが、どうもハチミツはほとんど取れないらしい。少し残念ではある。
 さらに読み進めると、スズメバチの巣との見分け方も書いている。アシナガバチの巣は軒下のような開放的な場所で最大でも直径二十センチメートル程度、スズメバチの巣は閉鎖的な場所にも作られることがあり茶色で大きく丸い形……。

 私の家の蜂は、本当にアシナガバチだったのだろうか。

 

(完)

 

蜂蜜エッセイ一覧 =>

 

蜂蜜エッセイ

応募要項 =>

 

ニホンミツバチの蜂蜜

はちみつ家メニュー

鈴木養蜂場 はちみつ家/通販・販売サイト

Copyright (C) 2011-2024 Suzuki Bee Keeping All Rights Reserved.