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蜂蜜エッセイ応募作品

おばあちゃん特製咳止めシロップ

小林 望

 

私は幼少時、完全なおばあちゃん子でありました。何をするにもおばあちゃんにべったり。雨の日も風の日も。そして風邪の日も。
扁桃腺が弱かったようで、ちょっと風邪をひくと咽頭痛がひどくなり、よると触るとぴゅーんと発熱してしまいます。もちろんそれは子供なりに辛いのですが、でも、そう言った時にはそう言った時なりの楽しみがありました。何かというと、おばあちゃん特製の咳止めシロップです。トロッとした黄金色の飲み物で、飲むと甘くて遠くの方に少し漢方薬に似た渋みがありました。これをお猪口に一杯、一日数回飲むのですが、ちょっと渋みのある甘さが美味しいですし、これがまたまたよく効くんです。これを飲むと数日で咽頭痛が引いて、少しずつ熱も下がっていくんです。
成長するにつれてだんだん熱も出さなくなり、また、良くも悪くも世の中は進んでいくものですから、思いっきり民間療法であるおばあちゃん特製咳止めの登場は少なくなっていきました。しかし、十分に大人になり、オジサンと呼ばれる年になってから、都会暮らしの中、冬場に加湿器がなく喉がイガイガすることが多い職場環境に晒されたとき、おばあちゃん特製咳止めをふと思い出しました。あれは一体何だったんだろう? 
ある時、実家に帰った際に尋ねて見ました。その頃にはもうすでに祖母は亡くなっていましたので、既に十分におばあちゃんになっていた母親にですが。さて、その答えは、「大根と蜂蜜」だったんだそうです。「『エエ(良い)大根』に『エエ蜂蜜』をかけてしばらく寝かせてつくるんや」って言いよったなぁ」と言うことでした。で、早速自分で作ってみました。
うん。美味しい。確かこんな味だった。

さて今、私は本職の医師です。
さすがに患者さんに「大根○g」&「蜂蜜○g」と処方することは制度上難しいのですが、自分用の咽頭痛対策はいつもこの咳止めシロップを自作して使っています。しかしながら、「おばあちゃん特製」ほどは効果が出ません。「エエ大根」と「エエ蜂蜜」の見立てが悪いのか、紀州熊野出身の祖母でしたから、何か修験道の秘伝でも会得していたのか。返す返すも、秘伝の奥義を伝授してもらわなかったことを無念に思っています。
でも美味しい。今年の冬もこれで乗り切りまーす。

 

(完)

 

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