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蜂蜜エッセイ応募作品

故郷から届いたはちみつ

依田美保子

 

 一昨年の冬のことである。故郷の長崎から従兄妹の奥様の訃報が届いた。従兄妹は私より一つ下で高校が同じだったこともあり割と仲が良かった。帰省した折には決まって叔母を訪ねたので、叔母に付き添う奥様とも何度かお会いした。控えめで優しそうな方だった。
 突然のことに驚いた私は心ばかりのお香典を送った。しばらくして従兄妹から手紙入りの荷物が届いた。中には大きなビンに入った蜂蜜が入っていた。はちみつ?
 私はすぐに電話をかけた。受話器の向こうから思ったより元気そうな声が聞こえてきた。
 「ずいぶん前から患っていて入退院を繰り返していたので、本人も私も覚悟していたんです。はちみつが好きでいつも取り寄せていました。召し上がってみてください」
 従兄妹の声が次第に小さくなって私にも悲しみが伝わってきた。奥さんが大好きだった
 というはちみつを選んだ従兄妹の顔が浮かんできた。帰省したらお墓参りに行かせてもらうことを約束して電話を切った。
 わが家もはちみつが大好きなのだ。誰かが風邪気味のとき、登場するのが「はちみつレモン」。輪切りにしたレモンにはちみつを一さじ、そこに熱々の湯を注ぎ入れてかき混ぜる。レモンがないときは果汁や他の柑橘類を絞ってもいい。甘酸っぱいはちみつレモンの香りを味わいながらゆっくりと喉の奥へと運んでいく。そして喉が潤い体中温まってきたころにお布団に入る。これがわが家流引き始めの風邪撃退法である。
 看護婦だった母から私、私から娘、そして
 孫たちへと引き継がれたはちみつレモンは、わが家流健康法の一つなのかもしれない。従兄妹の奥様のはちみつ好きも叔母の影響だったのかもしれない。従兄妹もまたはちみつの味とともに奥様を想うのだろうか。
 はちみつを一匙口にふくんだら甘い香りが漂ってきて懐かしい人たちの笑顔が浮かんだ

 

(完)

 

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