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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

ハチミツの相棒

東風海

 

 知りあいから家の庭になったというレモンを5ついただいた。
 ふっくらした鮮やかな明るい黄色が、艶々と輝いている。柑橘類の木を自宅で育てるのはけっこう手間がかかるらしい。なんといってもイモ虫を箸で取り除くのがひと苦労だと聞いた。そのおかげで美しい無農薬の実が育つ。
 菓子作りは得意でないので、レモン酒にすることにした。
 よく洗ったレモンを輪切りにして氷砂糖と交互にのせ、そこへホワイトリカーを投入。最後にハチミツをたっぷりとかける。あとはひと月ほど熟成させるだけ。さわやかな酸味がコクのある甘みと絡み合う逸品である。お湯で割るもよし、炭酸で割るもよし。
 ところでハチミツとレモンといえば思い出すものがある。
 中学生のころ、バスケ部に入った私は、先輩にレモンのハチミツ漬けを教えてもらった。文字通りレモンの薄切りをハチミツに漬けただけのしろもの。これを試合の前の日に作って持っていく。試合のあいまに先輩たちがそれを口にするのだ。甘さも酸味もストレートでかなりきついのに、先輩たちは、ぱくぱく食べてしまう。一年あまりで退部した私は試合に出ることもなく、結局それを感心して眺めているだけだった。
 しかし高校でそれに再会したのである。競歩大会というものがあり、全校生徒が荒川の土手をひたすら歩く。女子は八キロ、男子は十キロ。順位を競う体育会系の連中はさっさと走って行ってしまう。我々文化系は友だちと話しながらの散歩。しかし一応ポイントごとにタイムリミットがあるから、少し速足で行かねばならない。私は友人とアホな話をしてげらげら笑いながら、ただひたすらに歩く。だが、ふだんろくに運動もしないから、さすがにきつくなってくる。
 するとチェックポイントにあったのが、くだんのレモンのハチミツ漬け。懐かしい友との再会に思わず声をあげてしまう。そしてそれは震えるほど強烈に甘くて酸っぱいのに、身体にしみこむようなうまさだったのだ。疲れた身体にはぴったりである。なるほど運動とセットの味わいなのであろう。すっかり爽やかさを取り戻した我々はまた元気に歩き出し、制限時間ギリギリでゴールした。
 当時から三十年以上がたち、相変わらず運動には縁がない。今は、ちびちび味わうハチミツ入りレモン酒が、何よりの楽しみである。

 

(完)

 

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