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蜂蜜エッセイ応募作品

幸せな気分

夏秋 薫

 

 自宅近くに新しい店ができた。道路を挟(はさ)んでバス停の前だから、バスを利用する度に〇〇月〇〇日オープンの幟旗や看板が目に付く。
 チラシをみると自然食品を扱う店らしい。オープン記念として、日替わり特別価格の百円とある。そこに「蜂蜜」ものっている。
 蜂蜜好きでいつも切らさないはずだったが、以前、仕事でロシアに行った時に、割安だと多めに買い置いたのさえなくなりかけていた。
 百円に引かれて店を覗いたら、すでに先客三十人ほどが、セミナーのようにパイプ椅子を並べて座っている。「暇はたっぷりある」という顔をした中高年の奥様方が、店長らしい男のTVコマーシャルばりの熱い説明に耳を傾けている。邪魔をしないようにして、若いスタッフがいざなう後ろの席にすべりこんだ。
 会社はN市駅前に自社ビルを構えて、全国千五百ヶ所以上の販売店をうたっている。
 協力会社の自然食品を、「まず試して、良さを実感して下さい」という営業方針だそうだ。
 だからお試し価格で、壁際の棚には青汁や甘酒なども並べてあり、店長のプレゼンテーションが終われば購入タイムになる。
 今日の目玉はミャンマー産蜂蜜、定価千二百円を百円というから、皆さんお待ちかねだ。蜜自体は黒っぽい色がかえって蜜の濃さを示していて粗悪品には見えない。
 店長は、中国産に比べて聞き慣れない、ミャンマー産の蜂蜜が安心安全な製品であることを訴えている。最近、クーデターで政府が倒されたが、ノーベル平和賞を受賞したアウンサン・スーチーさんの時代からの付き合いを引き合いにして安心感の裏付けにしていた。
 そんな説明も上の空に、前の席のおばさんふたりは、さっきからおしゃべりに忙しい。
 「蜂蜜は赤ちゃんにはよくないんだよ」とウィッグをつけている年かさの奥さんが言うと、「あらそうなの。栄養があってよさそうなのにね」と若い方。「精力強すぎるんじゃないの」「そうかもね、うちは赤ちゃんいないから心配ないわ」「まだ、分かんないんじゃない。お宅若いから」「あたし?とてもとても。何歳だと思ってるの?」「あら、ギネスの記録では、五十七歳で産んだそうよ」「そうね、インドでは七十近くでも…という話もインターネットでみた覚えがあるけど」「旦那さんにいっぱい舐めさせて頑張ってもらいなさいよ」「うふふ」
 子づくりに効果があるかどうかは知らないが、蜂蜜は単なる甘味だけでなく、なぜか人を幸せな気分にしてくれる栄養豊富な食品であることは確かなようだ。

 

(完)

 

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