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ミツバチと共に90年――

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『ハチミツ談義』

ぷぅ。3

 

 咄嗟に、呟く。

 「こんな所に、ハチミツ屋がある。」

勿論、独り言。

 そう思ったのは、束の間の信号待ち。
 当時、住んでいた実家の近く、中高生の頃、朝夕、渡っていた信号のある交差点の近く。

 直ぐに、思い出す。両親が、世間話のように、言っていた。

 「意外に、こんな近くに、あるんだね。」
 「なんだ。あの店のことか。
 それにしても、しょぼくれた店だったな。
 暗いのに、電気も点いてない。あれで、ホントに、やる気あるのか。」
 「でも、ずっと、開いてるみたいだよ。
 そういう私も知らなかったけどね。お得意様でも、いるんじゃない。」
 「そんなに熱烈な信者みたいな人がいるのかな。
 それでも、あんな場所が、産地って言うのなら、あんな店じゃなくても
 直接、買いに行った方が、いいんじゃないか。」
 「そうした方が、安いって言うの。
 確かに、あの分量で、2,500円なんて。見て驚いちゃったよ。」
 「そんなの、店に行く前に、店の外から、見えなかったのか。」
 「・・・。」

母親は、目が点になる。

 武道で、例えると、一本取られたって感じに。

 「もう。そんなこと言ったら、何も言えなくなる。」
 「そうかな。そう言う自分も、お前に掛かったら、何にも言えないぞ。
 だって、あんな誰も人気がない店に入って、何も買わずに帰ってくるんだもんな。
 俺には、真似ができない。」
 「そんなこと言ってたら、食べていけないよ。」
 「主婦の賜物だな。もしも、俺とお前が逆だったら、大変なことになってた。」
 「最初は、私も、だったんだよ。でも、そんな事、言ってられない。」
 「おい。俺の稼ぎが、そんなに悪いとでも、言いたいのか。
 まぁ。どこかのお嬢様だもんな。今となっては、その欠片もないけど。」
 「こういう時、どう言えば、いいのかな。」

母親は、言葉に詰まる。

 「まぁ。二人だけなら、見栄を張っても、何とかなるんだろうけど。
 子どもが、いるとね。
 然も、一人ならともなく、二人以上いたら、流石に、そんな事は、言ってられない。」

そう言って、自分の方を、じろっと、見る。

 と言っても、別に、睨み付ける様子ではない。
 それが、却って、言葉を失う。

 直ぐ近くにある、同じ町の片隅に県内最大の溜池がある。
 自然に囲まれた、その畔で、養蜂場を営む人がいるらしい。

 でも、容器が、昔ながらの瓶詰。
 御蔭で、使い始めると、直ぐに、固まり始める。

 だから、買わなくなる。

 ハチミツを買おうとしたのは、父の糖尿病治療のため、医師が薦めてきたから。

 でも、その考え方は、間違っている。 おわり

 

(完)

 

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