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蜂蜜エッセイ応募作品

妻のはちみつ大根

健康とうさん

 

 定年を迎えて数年後、初めて入院をした。体だけは丈夫で風邪もめったにひかない。しかし、その時期いろいろあったため胃に穴が開くほども胃潰瘍をやった。
 初めての入院で本人はもとより妻をはじめ子供たちもうろたえた。
 自分だけはという思いとそれまで当たり前だった健康が遠いように思えた。
 その時期は再就職で他の仕事をしており家族と別に暮らしていたからかもしれない。食事や環境のバランスが崩れていたのもあとから思えば要因だったのかもしれない。がっしり体型だった体も雷の音でふらつくほどに痩せた。妻をはじめ子供たちにも迷惑をかけた。しかし、妻も子供たちも見舞いをはじめ、「退院したら何食べたい」と励ましてくれた。ようやく退院が出来てやはり家に戻ろうと思い今まで暮らしていた所でのかたずけに数日戻る時に妻がコーヒーの空き瓶を渡してきた。コーヒーにしては色が白い。妻曰く「胃潰瘍にいいと聞いたから。それにはちみつは健康にもいいのよ」と。大根はちみつだった。甘いもの苦手なうえに大根と蜂蜜?と思ったがせっかくの妻の好意だ。開けて食べてみる。入院して体調が変わったのか、美味いと思った。甘いものが好きになったみたいだ。薄くスライスした大根にはちみつがしみて一枚、また一枚と食べていた。妻が「食べすぎ」と笑っていた。あれから毎朝お茶受けとして妻のはちみつ大根を食べている。
 自分でも簡単だから作って食べるがなぜか妻の作ったはちみつ大根の方が美味いのだ。子供曰く、自分で作るより、誰かが自分のために作ってくれたというスパイスが入っているからだと言う。そういうものか。そういえば私が作ったはちみつ大根を妻は美味しいと食べてくれる。一日でも多くこのおいしいはちみつ大根を妻と食べれるように健康でいたいと願う日 々だ。

 

(完)

 

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