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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

スガレ蜂と蜂蜜

小野 勝也

 

 僕は信州で生まれ育った。貧しい戦後だったが、有り余る自然は豊かで毎日が刺激的で楽しかった。春いち早く田んぼにはレンゲの花が咲き、いろいろの昆虫が寄り集まってきた。僕たちはレンゲのなかで相撲を取って遊んだが、決まって持ち主に叱られて追い払われた。レンゲの花にくるミツバチを帽子でさっとすくい取り、上からゴシゴシと揉み、目をまわしているそれの首と胴をつまんで引き離すと首について夏みかんの小さな一筋のように蜜がたまっている。それを前歯でしごくようにしてかすかになめると飢えている甘みが味わえた。おなじころ冬眠から覚めたトノサマガエルを僕たちはドンビキショと呼んだ。そいつを捕まえて地面に叩きつけ失神して震えているのを引き裂いて股のやわらかそうな肉を桑棒の先につけて宙に掲げる。霞のたなびく春の日差しの中をどこからかスガレ蜂がやってきてその肉を見つけ、くるくるっと口先と手で丸め、それをもって飛び立っていく。それを繰り返してやってから最後に脱脂綿をくっつけてやる。すると味をしめてまたやってきたやつがそれを持ち上げて飛び出すから青い春の空の中をかすかに白い脱脂綿を求めて僕たちは走り出すのだ。一度目を離すと見失うからけして目を離してはいけないのだ。そうやって僕たちは里山の斜面を走り回った。運の悪い奴は切り株につまずいて、大怪我をすることもあったが、僕は何度もそうやって活動を始めたばかりのスガレ蜂の巣を見つけたものだ。小さな出入り口で地面の中に空洞を作り、小さな巣を作り始めていた。それを炭の粉と硫黄をまぜた粉末を竹の筒に詰めたので中をいぶし、煙に酔っているのを紙袋に拾い集め、家に帰って一斗缶の中に入れ出入り口をつけておく。すると、秋までせっせとスガレ蜂が働いて、秋には直径二十センチぐらいの四段五段の巣になる。僕たちはそれを取って母親に蜂の子ご飯を炊いてもらう。大変なご馳走だった。

 

(完)

 

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