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蜂蜜エッセイ応募作品

おじいちゃんの蜂蜜

鈴掛

 

 幼少期の大型連休はよく家族三人で祖父母の家に泊まりに行っていた。祖父母の家は和歌山県の山の奥まった田舎の一軒屋であり、三〇分以内の乗車でも乗り物酔いしていた当時の私は約十時間もの間車に揺られる帰省は正直うんざりしていた。
 しかし、帰省でしか得られない楽しみもあった。それは、おじいちゃんが取ってくる蜂蜜を好きなだけ食べられることだった。祖父は家や田畑から少し離れた山の中で養蜂を行っていたらしく、蜂蜜の採取時は1リットル程の瓶をいくつも蜂蜜で満たして持って帰ってきた。
 おじいちゃんが持って帰って来た蜂蜜は決まって最初は何にも付けず、そのまま食べていた。大きな瓶にスプーンを突っ込み、小皿に何杯かすくい出すと甘い匂いに顔がほころんだ。蜂蜜を出し終わるとスプーンをぱくりと口に入れる。花の匂いと濃密で爽やかな甘味が口一杯に広がり、車内での十時間で蓄積された疲れが徐 々にほぐれていくように感じた。一口食べ終えるともうひと掬い、またひと掬い。やがて僅かな残りのみとなった黄金色の液体を人差し指で掬ってペロリ。おかわりしたいけれども、もうすぐ夜ご飯だからとお預けになって、後ろ髪を引かれつつ夜ご飯のお手伝いにかかった。
 蜂蜜を採ってくれていたおじいちゃんが亡くなってもう十八年になる。あの一心不乱にスプーンに齧り付いた蜂蜜の感動は風化することなく二〇年を無事迎えた。きっと、おじいちゃんと同じ年代になっても、あの感動を忘れることはだろうと私は思っている。

 

(完)

 

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