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蜂蜜エッセイ応募作品

先生とはちみつ

ひよこ

 

 中学生のとき、憧れの英語女教師がいた。誰よりも教育熱心で、英語の発音がすこぶる綺麗で美しく、教え方もよく分かり上手だった。
 ある日、友人に先生の家に遊びに行こうと誘われた。彼女が生徒同士の訪問を承諾してくれるのかが不安だったが、すんなりと快く私たちの願いを聞き入れてくれた。
 今から三十年以上も前のことだ。当時、中学生であり、緊張していて、先生と何を話したのか、どんな家だったのかは全く覚えていない。ただ一つだけ記憶に深く残ったシーンがある。先生は私たちが帰る頃に、デザートの果物を出して下さった。一口サイズに丁寧に切ったりんごだった。そこで嬉しそうに、「ちょっと待っててね」と食べるのを止めて、はちみつのビンを大切そうに出してきて、たっぷりとそのりんごにかけ始めた。
 「こうやって食べると美味しいのよ」
 私は今までそんな食べ方を家庭でしたことはなかったので新鮮だった。そして、日本人離れした流暢な英語の発音は、きっとこの喉を潤すはちみつにあると、まるで秘密を知ったかのような嬉しい気持ちにさえなった。
 ドキドキしてあまりうまく大人としゃべることが出来ず、笑い方もどこかぎこちなかった自分だが、琥珀色のはちみつがたっぷりかかった果物を口にして初めて、優しい甘さと共にゆっくりと心がリラックスできた。
 今、大人になって、先生と同じ年齢、もしくは軽く超えてしまっただろうか。はちみつを色 々なところに加えて食事を工夫して作るようになった。カレー、シチューにサラダ、そして果物の上にただただゆっくりと贅沢にのせることもある。そのたびに、英語の恩師との和やかな空間を懐かしく思い出す。

 

(完)

 

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