渡辺 碧水
【蜜蜂に赤色はどう見える?(四)から続く】
早稲田大学教育学部の園池公毅教授は、様 々なことを学生や一般にネット上で公開している。その中には講義に関するものもある。二〇一七年前期の教育学部三年生対象の「植物生理学Ⅰ」の講義では「植物の花の色素と花芽分化」が解説された。
この講義に関して寄せられた学生のレポートが、前回(四)に挙げたものだった。レポートに出合って、「オーッ!」と驚いたのは(正直に言えば、ニャッとしたのだが)、参考文献(ブログ)の著者名が「鈴木袈裟美」となっていたこと。
引用されたブログは、詳しくは「ミツバチと共に九十年♪鈴木養蜂場はちみつ家のブログ」。掲載開始は二〇一一年九月二日、筆名「はちぶん」が担当。「はちぶん」の実名が「鈴木袈裟美」なら適切なのだが…。
「鈴木袈裟美」という人物は、同養蜂場の前身「はちみつ家」の創業者。大正時代の中期、信州の松代から五十群の巣箱を現在地の須坂に持ち込んで蜜蜂を飼い始めたとされる。創業は一九二一年(大正十年)、約百年前である。
会社のブログの引用は、責任者(社長名)や会社名を示すのが適切であろう。当例の場合は、会社名が別に入っているので、現社長の鈴木健太郎。
老舗の創業者が解説したのなら、すごい話。実際に、たぶん「はちぶん」の解説も引用だろう。それにしても、著者名が創業者だとは愉快な事実。
このレポートに対する教授のコメントは、次のとおりである。
「引用された部分ですが、そもそも、人間には紫外線は見えません。それなのに、『赤い花は黒に見える』と断言しているのは変だと思いませんか? 人間には赤に見えても、ミツバチには紫外線が輝いて見えるかもしれませんよね。もう少し、人の話をうのみにしない姿勢が必要でしょう。人の話をすぐに信じることは、一般的には美点ですが、科学の世界では欠点と言ってよいかもしれません。」
学生が引用した部分は、私も以前の(二)で真っ先に引用したものなので、教授からの講評は私自身にも当てはまり、いささか耳が痛い。
【蜜蜂に赤色はどう見える?(六)へ続く】
(完)
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