さぼほく
私はいわゆる末っ子長女というやつで、小さい頃から兄2人に囲まれて育った。会話の中で兄妹構成を明かすと、「それならさぞ、お姫様のように可愛がられていたんでしょう」と言われるのがお決まりだ。
しかし、私に言わせれば、これは全くの見当違いである。
子どもの頃、兄たちに混じって遊ぶと、キャッチボールをすれば制球力を謗られ、格闘ゲームをすれば手加減なしで打ち負かされた。妹扱い、女の子扱いなんて一度もされないまま、何をやっても負けてバカにされてばかりだった。そうして、その度に悔し泣きをしては、「いつか絶対に吠え面をかかせてやる」と心に誓ったものである。もっとも、当時の語彙力を考慮すれば、せいぜい「きらい、あっちいけ、もうあそんであげないから」程度のことしか考えられなかっただろうと思うが、あのとき芽生えた反骨精神は 今でも私の中で確かに生きている。
そんな訳で、きかん坊で負けず嫌い、「お姫様」らしいとは言い難い性格になった幼少期の私であったが、他方では「お姫様」的なるものへの憧れも同時に持ち合わせていた。
その気持ちを満たしてくれたのが、母の美容法を真似っ子する時間だった。子ども用のマニキュアで爪をきらきらにしたり、お揃いの巻き髪にしたりと、母と二人でオシャレをするのが楽しく 大人になれた気持がして、すごくうれしかった。
今でもはっきり思い出せる真似っ子美容のひとつに、「はちみつリップパック」というものがある。これはくちびるに蜂蜜をたっぷり乗せてラップで蓋をし、10分ほど放置するとプルプルになるというもので、空気が乾燥する冬、母と二人でよく試したものだった。「これはパックだから、はちみつ舐めたりしないんだよ」という母の言いつけを一度も守らず、毎回はちみつの甘さに舌鼓を打っていた私だったが、果たして母はそのことに気づいていたのだろうか。
そんなことを考えたら、ふと、遠くで暮らす母に会いたくなった。一人暮らししていると、はちみつをひと瓶使い切るのも時間がかかる。今夜は久しぶりに、はちみつをたっぷり使ったくちびるパックをして、お母さんに写真でも送ってみようと思う。
(完)
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