蜂蜜大好き
記憶にあるのは、小学生の頃の思い出。家にはいつも、チューブの蜂蜜が置いてあった。
砂糖とは違う独特の甘さ。口に入れると「ふぉあぁー」と風味が鼻へと抜けていく。私は、蜂蜜の甘い余韻が大好きだった。
母の目を盗んでは、ペロペロと蜂蜜を舐めた。一度舐め始めると、もう止まらない。
(あと少しだけ。あと少しだけ)
甘い誘惑には勝てない。気付いた時には、かなり減っていて「しまった」といつも後悔していた。
きっと母は、私の「つまみ食い」に気付いていただろう。しかし私を叱ることなく、温かい目で見守ってくれていた。蜂蜜の栄養と母の愛情に包まれて、私はすくすくと成長した。
残念なことに、大きくなるにつれていつの間にか、家に蜂蜜のチューブはなくなってしまった。私は、蜂蜜を口にしなくなり、その味を忘れかけていた。
その後結婚し、私は一児の母になった。
ある日、息子が
「ママ、蜂蜜と食パン買ってきて」
と言い出した。
(どこで覚えたのだろう)
不思議に思いながら、私はスーパーで、昔、母が買っていたのと同じような、チューブに入った蜂蜜と食パンを買い、息子に渡した。
息子がどうするのか興味津々で、私はこっそり隠れて、息子の様子を眺めた。
息子は食パンの耳に沿ってチューブを動かし、蜂蜜を隅々まで満遍なくたっぷり塗ると、大きな口で食パンにかぶりついた。
その瞬間、私の口の中にまで、蜂蜜の甘くて美味しい味が広がった気がした。長い間忘れていた懐かしい味だ。
「ママにもちょうだい」
こっそり隠れて見ていたことも忘れて、私は息子の所へ行くと、息子の返事も待たずに、勝手に食パンを袋から出して蜂蜜を塗り始めた。
「プーン」と蜂蜜の甘い香りが鼻をつく。
(ああ、この匂い。たまらない)
息子と並んで食パンにかぶりつく。
「ママも蜂蜜が大好きで、子どもの頃、よく食べたのよ」
息子を相手に、思い出話に花を咲かせた。
母から私、そして息子へ。自然と伝わる食文化。蜂蜜の甘い魔法だ。
(完)
蜂蜜エッセイ一覧 =>
蜂蜜エッセイ
応募要項 =>
Copyright (C) 2011-2026 Suzuki Bee Keeping All Rights Reserved.