みーちゃん
「え、何このにおい」
私が始めて蜂蜜を知った瞬間、まだ小学校5年生だっただろうか。
友達関係に悩み尽くしていた頃、私のいる女子グループで密かに流行っていたのが「ハンドクリーム」だった。
少々自慢げに手を揉み上げクリームを広げる彼女からは、不思議なにおいが漂っていた。
彼女やその周りは「いいにおいだね」と、気持ちを持ち上げている様子だった。
もちろん、私も嫌われたくないので持ち上げる。
「私は苦手なにおいだ」
これが私の本心だった。そう、蜂蜜が入ったハンドクリームだったのだ。
「みーちゃんも塗ってみる?」
そう言われてからの記憶はない。
その日から私は、蜂蜜が苦手になった。私の身の周りにある「蜂蜜」と書かれたものは、すべて避けて通ってきたのだ。もちろん、とあるテーマパークで売っている「蜂蜜フレーバーのポップコーン」も。
そんな私が三十路と言われる時期を過ぎた頃、とある新聞から地元でレモンが栽培されていると知った。私の地元は特に温暖な気候ではないし、無知な私は正直驚きを隠せなかった。こんな地元で国産のレモン、お菓子を作ったりお酒を嗜む我が家では、まさに魅力的な話だった。
日差しも暖かくなった春先に、意気揚々と買いに走った私は全く学習していなかったことを痛感することになる。販売時期を過ぎていたのだ。
反省を活かした私は、収穫時期に合わせ販売場所を訪れた。念願のレモンを目の前に高まる気持ちを抑え、何種類かのレモンを吟味していた。ふと横を見ると見知らぬマダムも吟味していた。
「ここのレモン、蜂蜜に漬けるとすごく美味しいのよ」
おそらく常連マダムであろう。
お礼を伝え、レモンを手にした私に迷いは無かった。きっと、美味しい蜂蜜であれば私も克服ができるのではないだろうか。
気づいた時には、私は蜂蜜専門店に足を運んでいた。間違いなく、あのマダムから声をかけられなければ訪れることはなかっただろう。店員にオススメを聞き奮発して購入した私は、さっそく家に帰り封を開けた。
「あれ、そんなに臭くない」
レモンの蜂蜜漬けをきっかけに、私は完全に蜂蜜にどっぷりハマってしまったのだ。紅茶の相棒として、必ず隣に君臨している。
風邪をひいて咳がひどい時も、大変お世話になった。
そして今もなお、私の人生に潤いをもたらしてくれている。蜂蜜だけに。
(完)
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