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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

母と蜂蜜

碧 水翔(あおい みなと)

 

東京は両国に、ある勉強室があって、少しばかりの会費で、机・本棚を自分のスペースとして使えた。各自いろんな勉強をする。その中でNさん他数人でゼミをやったりもした。

うまく行った人もいるが、大半は夢破れて去って行った。

NNさんは、故郷の長野県に帰った。何と「奥さん付き」だ。何でも、実は勉強の後、夜な夜なスナック通いをしていたらしい。店の女の子と仲良くなったのだ。そしてまた何と、それが中国の人だという。

エーッ、そんないい事やっていたのか!

10年余りも過ぎた。僕は家庭教師のアルバイトが調子良く、そのまま東京に残った。

人気教師でもないのに、浮かれてしまった。

少しばかり稼いで、50も過ぎて、車の免許を取った。車も買った。田舎の母のことを考えたのだ。

年を取って乗り始めたこともあって、すっかり嵌ってしまった。Y君が一緒に乗ってくれて、高速道をムダに走ったりもした。

そのうち、両国の室にいたUさんと、長野のNさんの所に行こうということになった。

朝早く出発、関越道から上信越道を経て、地図頼りに国道を行く。やがて、山の中腹までグイグイと上って行き、Nさん宅に到着。

奥さんと子供は留守だった。

Nさんはすっかり養蜂家になっていた。

奥さんが用意してくれていた軽い昼食を取り、Nさんの案内で近辺を回り、南アルプスの素晴らしい景色を堪能した。

Nさん宅に戻って、蜂蜜入りお茶などご馳走になった後、夕方になる前に、あたふたと帰途についた。山道やクネクネした国道で薄暗くなっては拙いからだ。

そして無事戻った。

この事を田舎の母親に話した。

そうすると、何と、Nさんの電話を教えてくれと言う。

母親はNさんに電話して、蜂蜜を何個か注文したという。そして、自分用とは別に、数個ずつ近所のお隣さんなどに配ったという。

すごーい! 母親はこんなに社交的で、太っ腹とは。何事にも控えめで謙虚で、お金も堅実な母親が。

でも、知っていた。実はユーモアがあって、小さい体だが、思いっきりがよく気っ風がいいと、

蜂蜜は、そんな母親の思い出を甘く結びつけてくれる。今も蜂蜜は大好きだ。

(完)

 

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