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蜂蜜エッセイ応募作品

ロンガンハニーなお年頃

はやてまる

 

夫と結婚して8年が経つ。もはや新婚ではないし、かと言って熟年夫婦でもない。夫婦というのは不思議なもので、時と共に形を変えていく。とりわけ、子どもが産まれてから、私たちの関係性は少しずつ変わったように思う。

恋人同士だった頃は、相手の言葉一つ一つに一喜一憂していたのに、今では会話の多くが「園のお知らせ見た?」といった実務連絡だ。嫌いになったわけではない。ただ、夫婦だけの時間や感情は、少し奥へとしまい込まれただけなのだ。

そんなある日、夫が出張から帰ってきた。

「ほい、土産」

手渡されたのは、蜂蜜の小瓶だった。タイのロンガンハニーだという。龍眼の花から採れた、少し珍しい蜂蜜らしい。

翌朝、トーストに垂らしてみた。ひと口食べて、少し驚く。濃厚な甘みの中に、紅茶のような独特の風味があり、ふわりとフルーティーな香りが広がる。よく知っている蜂蜜の優等生的な甘さとは違う。主張はあるのに、うるさくない。なんだ、これ、私たちみたいだな、と思った。

若かりし日の分かりやすく甘かった恋愛は、今や、忙しさや疲れ、言葉にしきれない感情が混ざり合って、単純なものではなくなっている。それでも、毎日の生活の中で、なくてはならない存在なのだ。ロンガンハニーを舐めながら、夫がこれを選んだ理由を考えた。もしかしたら、無意識に、今の私たちに似た味を選んだのかもしれない。

派手な愛情表現は減ったけれど、こうして選んでくれたものの中に、ちゃんと気持ちはある。甘いだけじゃない。深みがあって、滋養があって、少し大人の味。

「ちょっとクセあるけど、おいしいやん」

私が言うと、夫はニッと笑った。

「やろ?だんだん好きになる味なんやって」

(完)

 

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