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ミツバチと共に90年――

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転機

KOHー

 

蜂蜜は、正直苦手だ。

幼い頃、アニメや絵本の影響で、とっても甘くて幸せな食べ物なのだと思い込んでいた。

でも、実際に食べてみると、めちゃくちゃに甘いわけではなく、どことなく渋みのような、苦みのような物も感じられるし、においもなんか独特だった。

私のリアクションがそんなんだったからか、我が家ではあまり蜂蜜を食べることなく大人になった。

大人になり、仕事を始めた。人前で話すことも多く、大きな声を出すこともしばしばある職業のせいか、喉の痛みや声が出にくいと感じることが増えた。

職場の先輩から、「プロポリスが喉にいい」と聞いて、さっそく薬局だかスーパーだかで、プロポリス入りののど飴を買って、なめてみた。

これまた、苦い。味もにおいも独特だ。

ここでまた、幼少期の苦手だった蜂蜜を思い出した。飴は、2つくらいは薬だと思ってなめたけど、結局大してなめずにやめてしまった。

蜂蜜と縁遠い生活を続けていた私の転機は、結婚だった。

妻が蜂蜜好きだったのだ。妻は、1kgの大きなボトル入りの蜂蜜を頻繁に買う。そして、ホットミルクやらヨーグルトやら、何にでも入れる。蜂蜜が身近にある生活が始まった。

私は、蜂蜜が苦手だからと入れるのを拒んでいたのだけれど、ある時、風邪をひいて声が出にくくなってしまったことがあった。

妻は、ホットミルクにしょうがペーストを溶き、マシュマロを浮かべ、そこに蜂蜜をたっぷりかけた、特製ドリンクを私に飲ませようとした。しょうがにマシュマロに蜂蜜という組み合わせがどうにも受け入れがたかったのだけど、妻の親切心と心配の気持ちで作られた飲み物だし、断ると申し訳ないなと思って、飲んでみた。

ここまで、混ざっていたら蜂蜜の味も何もないだろうと思っていたのだけど、予想に反して美味しかった。単純に体が弱っていたところに、エネルギーを力づくでねじ込まれたことが良かったのか、ミルクにしょうがにマシュマロに、蜂蜜という組み合わせが良かったのかわからないのだけど、ほんのりと優しい甘さにピリッとしょうがが効いていて、痛む喉を優しく包むような口当たり…。気付けば、全部飲み干していた。

その後、風邪の引き始めが、必ず喉に来る私にとって、ホットミルクとしょうがと蜂蜜(マシュマロは、甘すぎるので入れないことの方が多い)のドリンクは、定番の薬になった。

(完)

 

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