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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

琥珀色の時間

ミツバチグッチ

 

私の祖父は京都府福知山市で農業を営みながら、少しだけ養蜂もしていました。

田畑の仕事の合間に、祖父は蜂箱の前に立ち、耳を澄ませるように中の様子をうかがっていました。その姿は、何かと対話しているようにも見え、幼かった私には少し不思議で、同時にとても印象深い光景として記憶に残っています。春から夏にかけて、ミツバチたちは休むことなく飛び回り、花から花へと季節をつないでいきました。祖父は蜂について詳しく語ることはありませんでしたが、その接し方は驚くほど丁寧だったように思います。必要以上に手を入れず、急がず、奪いすぎない。自然と向き合う距離感を、祖父は言葉ではなく、日々の所作で教えてくれていたのだと思います。採れる蜂蜜は決して多くはありませんでしたが、その一滴一滴には、花の香りや風の気配、そしてミツバチたちが積み重ねた時間が溶け込んでいるように感じられました。さくさくに焼いたパンやスコーンに、琥珀色の蜂蜜をとろりと落として食べる。その控えめで奥行きのある甘さはいまでも忘れられません。そしてこれは、私にとって今なお最高の贅沢になっています。

蜜蝋もまた、大切に使われていました。道具の手入れや小さな細工に姿を変え、無駄になることはありませんでした。ミツバチから受け取った恵みを、最後まで使い切る。その姿勢から、自然とは「消費するもの」ではなく、「循環の中で分け合うもの」なのだという感覚が、静かに私の中に根づいていきました。

私の尊敬するアルベルト・アインシュタインは、「世界からミツバチが絶滅したら、数年後に人類も滅びるだろう」という言葉を残しています。自然界の小さな存在が、私たちの暮らしの基盤を支えていることは確かです。祖父の養蜂を思い出すたび、その事実が実感を伴ってよみがえります。効率や便利さが重視される現代において、祖父の養蜂はあまりにもささやかで、非効率に見えるかもしれません。それでも、あの蜂蜜の味は、いまも私の中に確かに残っています。自然と向き合い、時間をかけ、必要な分だけを受け取る。その記憶は、私の暮らしの奥深くで、静かに、そして甘く息づいています。

(完)

 

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