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蜂蜜エッセイ応募作品

彼は低気圧ボーイ

岩澤あでり

 

憂鬱は、前日の天気予報を見たときからすでにはじまっている。

カーテンから刺す光が鈍い朝、

私の隣にいるのは、明らかに低気圧ボーイだ。

顔の濡れたアンパンマンにも勝るほど弱々しく、

曇った表情でベッドから這い出してくる。

雨が続く時期がくると、天気予報を見て考えるのは、

明日着る服のことでも、うねる髪の毛のことでもなく、

仕事へ向かう彼の姿だ。

これまでの私は、

「明日は白いスカートは履けないな」なんて、

自分の世話を焼くことだけだった。

ある日、ネットで調べものをしていると、

はちみつが彼の不調を和らげるかもしれない、という記事を見つけた。

「買ってきてみようかな」と頭に浮かぶが、

はちみつを食べる習慣のない私にとって、

その情報は雲よりも早く流され、そのうちに忘れてしまった。

仕事ではじめての町へ行くと、道の駅や土産もの店を訪れるのが好きだ。

その土地で取れる野菜や、工芸品を眺めながら、

そこに住む人たちの温度と色を感じて楽しんでいる。

食品の棚に目をやると、

地元の養蜂家さんのはちみつが目に留まる。

瓶に入ったはちみつが、琥珀色のグラデーションをつくっていた。

花の種類や季節によるはちみつの色のちがいに、

ひそかに胸がときめく。

「今日のおみやげは、これで決まりだね」

手にとったのは、アカシアのはちみつだった。

帰り道、彼にメッセージを送る。

「今日はおみやげに、アカシアのはちみつを買ったよ。」

すぐに返事が届いた。

「ありがとう。アカシアのはちみつが好きなの、よくわかったね。」

わたしは好きなうたを口ずさみながら、家路を急ぐ。

(完)

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