原科 明来歩
蜂蜜は危険な食べものだ。
一口だけにしておこう、と思って食べ始める。だがしかし、ねっとりと口の中に絡みついてくる甘い誘惑に抗えた試しがない。
グヘヘ、グヘヘと貪欲に舐め続ける私。数日で空になってしまう、蜂蜜がなみなみと入っていたはずの瓶。蜂蜜入りの壺を大事に抱え、それを手のひらにべっとりと纏ったくまのプーさんの姿が自分と重なる。
プーさんを実写化したら、一体どれくらいの容量の壺が必要になるのだろう。というか実在の熊は、そこまで蜂蜜が好きなのか。
それはさておき、私はハニーバタートーストを作ることも多い。
トースターを温めつつ、パンにパターを塗る。トースターが熱を持った状態で焼き始めると高温で一気に焼き上がり、焼きムラが防げると本で学んだ。
瓶の蓋を開け、黄金色に輝く蜂蜜の表面にずぶずぶとスプーンを差し込む。蜂蜜を掬いあげたスプーンを、パンの上に移動して傾ける。もったりとした重さのある液体がまっすぐな線を描きながら、とろとろとパンの表面に流れ落ちていく。美しい。
焼かれたパンの縁に歯を立てると、パンの耳がザクッという音を立てる。続けざまに蜂蜜とバターが染み込んで、頼りない食感となったパンを噛みしめる。ハチミツの上品な甘さに舌から歓声が聞こえてくる。塩気のあるバターの濃厚な脂肪分が、口全体にジュワジュワッと広がる。
三位一体。これすなわちZEPPINなり。
蜂蜜は私の生活に喜びや彩りを与えてくれる、ありがたい存在だ。
だが同時に、こんなに糖分の過剰摂取をしていては近い将来何らかの不具合が身体に出るのでは、という危機感も抱いている。ワタシ、カラダ、ダイジ。
値段が張るマヌカハニーならば消費スピードを落とせるだろうと考え、蜂蜜の代わりに買い求めた時期もあった。しかし期待していた結果にはならず、私は元の生活に戻ることとなる。残念無念。
せめて大瓶で買うのは控えようと思い、近頃は手の平にちょこんと乗るくらいの小瓶入りの蜂蜜を買っている。結晶化しにくいアカシアハチミツを選ぶことが多い。寒い時期になると白く濁って固まる蜂蜜は、湯煎で溶かすのが面倒くさいのだ。
蜂蜜を新しく買うたび、「次こそ大切にゆっくり食べよう」と決意する。誓いが守られたことはまだ無いが、今後どうなるかは分からない。
欲望を上手くコントロールできたと両手を上げる日は、きっとやってくる。ここで諦めてはいけないのだ。
(完)
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