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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

ミツバチが教えてくれた『ひとりで生きない』勇気

ぬまちゃん

 

「山の見える景色のなかで暮らしたい。」

多くの人にとっては、それは日常の中にある当たり前であるかもしれない。だが、無機質で直線的なビル群が立ち並ぶ都会で育った私にとって、曲線美をなす山の稜線が横いっぱいに広がる風景というのは、どこまでも非日常の存在で、そしてまた、なぜか心を深く癒してくれるものだった。父がテレビで旅番組をつけるたびに、私は映し出されるその自然風景に憧れの思いを募らせる、そんな幼少期を送った。

「どうしたら、ああいう土地へ行けるだろうか。自然の風景の美しさに、目いっぱい浸れるだろうか」

気軽に旅行に行けるような家庭ではなかったため、私は次第に「旅行で行けないなら、いっそ住んでしまえばいいのでは」と考えるようになった。幼心に生まれた夢の灯火は消えることなく、ついに今年の春、私は就職で中国地方の山あいにある小さな町にやってきた。

私はそこで、生まれてはじめてミツバチに出会った。その町は、昔からレンゲの花による養蜂が盛んだったらしく、近所で行われる養蜂体験に参加する機会を得たのだ。

私にとってミツバチは、「生きるとはなにか」を体現した、生命の力強さの象徴だった。

周囲を飛び回る数多の羽音に緊張感を掻き立てられながら巣箱を開けると、びっしりと巣板の上を歩くミツバチの姿が目に入る。最初は「刺されるんじゃないか」「近づいてきたらどうしよう」と恐怖心を抱き、それこそ手の上を歩いてきたときには息もできなかったが、ミツバチは意外と襲ってこない。体験を二回、三回と重ねていくうちに、むしろその姿が愛おしく見えるようになった。ゆったりながらも一歩一歩進むその様子は、四十日ほどしかないその命が懸命に生きている姿に見えたのだ。

ミツバチは、巣全体でひとつの生命として生きる、社会性の動物だ。一人で生きるのではなく、役割分担をして、自分の仕事をしっかりとこなしながら、皆で共に生きていく。それは、いかに自分がふるい落とされないかを考えながら生きていた、都会での個人主義的な生き方とは正反対のものだ。

田舎は、ひとりでは生きられない。誰かに助けられ、そしてまたそれを返していく。そういう「共に生きる力」が必要だ。なるべく人に迷惑をかけないように、という価値観から、どんどん人を頼っていくという価値観へ変容するのは簡単ではない。田舎で共に豊かに暮らしていくための生き方とは、どのようなものなのか。私はそれを、ミツバチの生きる姿から教わった気がした。あがきながらそれをつかもうとする私の一歩一歩も、他者から見れば懸命に生きようとする美しいものかもしれない。

(完)

 

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