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蜂蜜エッセイ応募作品

或る声楽家の嘆願文―蜂蜜2キロください―

吉田貞美

 

私は声楽家、喉のプロフェッショナルである。今、賞品の蜂蜜が欲しくて、慌ててこのエッセイを書いている。現在1月29日。最近文章を書くのにハマっている私は「何かエッセイのコンクールみたいなのないかなあ」と検索したところ、この賞を見つけ、目を血走らせながら書いているのである。

なぜかって? 月の蜂蜜代がばかにならないからだ。

声の専門家なのにもかかわらずアレルギー体質で喘息持ち、更には慢性上咽頭炎と医師から診断を受けている。三重苦、と自分で言ってしまう程度には声帯と気管のご機嫌伺いをしながら生きている私。蜂蜜を手放すことができない。

漢方より、ステロイドより──と書くと大げさに感じるかもしれないが、少なくとも私の体感では、蜂蜜が一番良く効く。これは蜂蜜のエッセイを書いているから胡麻を擦っているのではない。本当にそうなのだ。

蜂蜜は声帯と気管を潤し、殺菌までしてくれる、歌手である私の強い味方だ。

普段持つ鞄──大体5個ぐらいある──のポケットには必ずお気に入りのプロポリスのど飴が入っている。乾燥が酷い冬、枕元に置くドリンクはアカシヤ蜂蜜に柚子を漬け込んだ自家製ホット蜂蜜柚子。もう少し踏ん張りが欲しい日はプロポリス入り蜂蜜やマヌカハニーと、お喉様のご機嫌によって使い分けている。

虫歯の心配?そんなものより声が出なくなる方が恐い。声が出なくなると収入がゼロになる歌手にとって、声帯の健康は命そのものなのだ。

演奏会本番のステージドリンクとしても、水筒に入れてホット蜂蜜柚子を持ち込む。スティック状に梱包された蜂蜜そのものを鞄に忍ばせることもあるし、マヌカハニーのタブレットも重宝している。

埃っぽいステージ裏。当たり前のことだが舞台衣装であるドレスで待機するので、緊張だけでなく冷えとも戦わなくてはいけない。そんな時、蜂蜜の甘い湯気は私の喉だけじゃなく、心も支えてくれる。

蜂蜜はお守りであり、蜂蜜湯を一口飲むことはもはや本番前の大事な儀式でもある。

そして今。上述した通り、35歳、"お肌の曲がり角"を疾うに過ぎた私の喉は今すこぶる調子が悪い。どんなに二日酔いでも、寝ていなくても音を出してくれた私の楽器は、今はご機嫌斜めの時期である。

あまりにもご機嫌が斜めすぎて、対策を練るために薬膳の資格を取るための学校にも通い始めた。

薬膳の世界でも蜂蜜は評価が高い。

・おなかの働きを助け、痛みを和らげる「補中緩急」

・喉を潤し咳を鎮める「潤肺止咳」

・腸を潤し乾燥による便秘を改善する「潤腸通便」

蜂蜜は甘味料としてではなく「薬」として扱われていることを最近知った。

まだ薬膳は学び始めたばかりだが、やっと腑に落ちた。舞台袖で、甘い湯気に救われてきた感覚。あれはプラシーボの類ではなく、本当にその効能があったのだ。

私はこれからも毎日蜂蜜を舐め、湯気を吸い、喉の機嫌を聞きながら歌い続ける。

小さな蜜蜂達が、私の声を次の舞台まで連れていってくれると信じて。

(完)

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