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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

少し早すぎる訪問者

あけみ君

 

わが家の庭の片隅には、一株のローズマリーが根を張っています。鉢植えではなく、地面に直接植えただけの、いわゆる「放ったらかし」の状態。それでも毎年、凛とした薄紫の小さな花を咲かせてくれます。その健気な姿を見るたびに、植物の持つ静かなたくましさに、ふと心が洗われるような気持ちになります。

例年、この花が咲き、みつばちたちが羽音を響かせながらやってくるのは三月頃のこと。「ああ、春が来たんだな」と、私に季節の移ろいを教えてくれる、それは大切な合図でした。

けれど、今年は少し様子が違いました。

一月の澄んだ空気の中、ふと庭に目を向けると、そこにはもう小さな訪問者の姿があったのです。「まだ冬の真っ只中なのに、もう動き出しても大丈夫?」驚きとともに、冷たい風に吹かれるその小さな背中が、少しだけ心配になりました。

それからというもの、日差しが顔を出すたびに、みつばちは姿を見せてくれます。花の中に顔をうずめるようにして蜜を集め、また次の花へ。その懸命な働きぶりは、この庭の季節を誰よりも早く感じ取り、知らせてくれているようにも見えました。

そのすぐそばでは、めじろも楽しそうにくちばしを動かし、冬の終わりのご馳走を味わっているようです。

私は、そんな庭の賑わいを窓の内側からそっと眺めています。窓際にある猫のベッドの隣で、二匹の愛猫と並んで寝転ぶ昼下がり。猫たちも外の小さな気配が気になるのか、ときどき耳をぴくぴくと動かしたり、目を覚ましたあと外の様子を見て目を凝らし「カカカッ」と小さくつぶやいたりと、ガラス越しの追いかけっこを楽しんでいます。冬の陽だまりに包まれた室内はぽかぽかと暖かく、外を流れる冷たい風を、一瞬だけ忘れさせてくれます。

外では、みつばちが小さな体で懸命に命をつなぎ、内側では、猫たちの寝息とともに穏やかな時間が流れる。ローズマリーとみつばちが届けてくれた、少し早すぎる春の訪れ。

その羽音に耳を澄ませながら、これから本格的にやってくる季節が、どうか優しく穏やかなものでありますように。そんな願いを抱きつつ、私は今日も、窓辺の特等席で命の輝きを見守っています。

(完)

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