いやご
12月の仕事帰り、お昼ご飯を軽く済ませてしまった私は、お腹を空かせ、急ぎ足で駅前の通りを歩いていた。
目を右へ、左へせわしなく動かしながら、自分を取り囲むビルのテナントの中から、極限の空腹を満たしてくれそうな店を探していた。
あまりの寒さにスマホを出すことすら億劫だった。地図アプリが無いといくら歩いても、めぼしい店が見つからない。
「一件くらいは良い店がありそうなものなのに。」
お腹が空いて、だんだん悲しくすらなってきた。そんな時、ふとミツバチのことを考えた。彼らはこの広大な世界から、あの小さな体で、どうやって蜜を抱える花を見つけ出しているのだろう。
今は「都市養蜂」という言葉もある。つい先日目にした記事を思い出して想像を巡らせる。彼らも今の私のように良い花を探して飛び回っているのだろうか。平坦な道を行く私とは違い、上に、下に、縦横無尽に張り巡らされた電線や電柱を避けながら、複雑に生い茂る都会の森を飛び回っているのだろう。
そんなことを考えながら進んでいると、空腹を刺激する重々しいスパイシーな香りがした。目の前には赤と黄色の光輝く看板。
「カレー屋だ!」
私は吸い寄せられるようにその店に入り、そこでカツカレーを食べた。私はなんとか無事に、今日の夕食を見つけることができたのだ。
空腹が満たされからか、外はさっきほど寒くはない。のんびりと歩く帰り道。先ほどの関心の続きを思う。ミツバチたちはいったいどうやって花を探しているのだろう。もしかしたら今私がカレーの香りに魅かれたように、ミツバチたちにとって花の香りは素晴らしく濃く、強い物なのかもしれない。花弁は、夜の街の看板のように光り輝き、目に鮮やかに写っているのかもしれない。
ミツバチの見る世界を少しだけ体感できたような気になった。彼らは大変な思いをして蜜を集めているのだなぁ。
来年、春になって花を植える時は、ベランダの少し高いところに花を置こうかと思う。
ミツバチたちにとって、少しでも花が見つけやすくなるように。
(完)
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