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蜂蜜エッセイ応募作品

魔法の薬の正体

蜜林檎

 

「魔法の薬」の正体はなんと、はちみつレモンジュースだった。本物の魔法の薬だと信じていた幼い自分の無邪気さを、微笑ましく思い出す。

幼稚園の頃の話。幼稚園は楽しかったけど、毎日ちょっと背伸びしていた気がする。私は早生まれで、何をするのも他の子より遅かった。たとえばトイレにも手間取って、済ませるのが友達より遅くなる。トイレから出ると仲良しの子が他の子と遊んでいることがよくあった。それが嫌で、だんだんトイレを我慢することが増えた。無意識のうちに水分を控えるせいで、水筒もほとんど飲まずに持ち帰る毎日。そんなことが積み重なって、膀胱に菌が溜まってしまい、四歳の時に膀胱炎を発症した。

病院に通い、定期的に点滴を受けた。何度も針を入れなくて済むように、針はいつも腕に入れっぱなしだった。ずっと針が入っているのは怖いし、片手が包帯で巻かれるのは不自由だ。その頃の私は、いつもご機嫌斜めだった。

すると母は水筒に「魔法の薬」を入れて持たせた。

「これは魔法の薬。毎日これが空っぽになるまで飲めば、病気が治るよ。」

魔法という言葉は、幼い私に甘く響いた。魔法を信じて、毎日水筒が空っぽになるまで飲んだ。

「魔法の薬」はとてもおいしかった。甘くて酸っぱくてすっきりしてて、いい匂いもする。こんなに美味しくて病気を治してくれるなんて、さすが魔法の薬だ。私の心はだんだん明るくなった。今までほとんど飲まなかった水筒を、空っぽになるまで飲んだ。「魔法の薬」のおかげで、膀胱炎は無事治っていった。

何年か過ぎたある日、冷蔵庫に珍しいボトルを発見した。母に聞くと、自家製のはちみつレモンジュースらしい。久しぶりに作ったとのことで飲んでみると、あの時の魔法の薬と同じ味がした。「魔法の薬」は、母お手製のはちみつレモンジュースだったのだ。水筒に少しでも気が向くようにと、母がしかけた工夫だった。魔法でもなければ薬でもない、ただ、尿が出やすくなるための水分でしかなかったと思うと、ちょっと笑える。

大人になった今も大好きなはちみつレモンジュース。レモンの酸味の中にある優しい甘さは、「はちみつならでは」だ。くどくなく、穏やかに口の中に広がる甘みは、疲れを癒し、明日に向けてそっと背中を押してくれる。

最近はアレンジにもハマっている。お気に入りは、炭酸で割って飲むことだ。甘みと酸味の絶妙なバランスに、炭酸のピリッとした刺激が爽やかに感じられる。「魔法の薬」の大人の楽しみ方のような気がして、幼稚園の頃の自分が懐かしい。

(完)

 

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