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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

はちみつは世界を広げる

のりてぃ

 

「日本の蜂蜜はあまり美味しくない、水あめみたい」と、知り合った日本在住のキルギス人女性が言っていた。それが、私が蜂蜜に目を向けるきっかけだった。美味しくないと言っていたのは、スーパーやコンビニで低価格で売っているものだろう。私がそれまで買っていたのも同じような蜂蜜で、蜂蜜自体を特に美味しいものと思っていなかった。

キルギスは中央アジアの山岳地帯の国だ。おやつに蜂蜜とナッツを一緒に食べることが多いと彼女は教えてくれた。その蜂蜜は心にしみるように美味しいのだと。そこで、彼女が帰省した時に蜂蜜を買ってきてくれるようにお願いした。

キルギスでは蜂蜜を大きな単位で買うことが多いらしく、彼女は大きなプラスチック容器に入った3種類の蜂蜜を買ってきてくれた。日本で見かけるキルギスの蜂蜜は白色だが、その時の蜂蜜は濃い茶色、琥珀色、薄黄色で、高原の草花の蜜だった。

どれも甘味が強く、コクがあって、のどにしみわたる感じがした。彼女が言っていたのはこういうことか、とわかった。私の好みに合ったのは薄黄色の蜂蜜。ハーブの爽やかな香りがする。写真で見たキルギスの草原が目に浮かんだ。

その後、蜂蜜の効用についても本で読み、知識を増やしていった。抗酸化作用があり免疫力を高めること、ほぼすべての栄養素を含むこと、等々。そして毎日寝る前に一さじ、キルギスの蜂蜜を摂りはじめた。効果てきめん。風邪を全くひかなくなったのだ。

蜂蜜にはすごいパワーがある、と体感したその頃から、旅先では必ず蜂蜜を買うようになった。イタリア、ポルトガル、ラオス、スリランカ。蜂蜜は世界中どこにもある。そして個性が全然違うのが面白い。例えばラオスの蜂蜜は黒っぽい色でさらさらしていた。スリランカのものは粘度があって甘味が強い。これまでの一番のお気に入りはイタリアのシチリア島で買ったタイムの蜂蜜。雑貨屋さんで大きなかごに無造作に山積みになっていたのを軽い気持ちで選んだのだが、芳香と呼びたいような素晴らしい香りで、中身がほとんどなくなった今でもびんを捨てずに持っている。

国内の蜂蜜も、必要以上に加熱をしない品質の高いものを選べば、美味しいことがわかった。スパイシーなカラスザンショウ蜂蜜、コクのある栗やトチの蜂蜜、甘味と苦みが同時に味わえる沖縄の蜂蜜。これらは国内のお気に入り蜂蜜だ。

今や私の家の戸棚には15種類ほどの蜂蜜がある。ある人との何気ない会話から、私の生活は変わり、世界が広がった。これからも新しい蜂蜜との出会いが楽しみだ。

(完)

 

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