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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

ミツバチがくれた静かな贅沢

清太郎

 

花にとまると、ミツバチは小さい体を花の奥へとぐいっと入れます。細かい花粉がふわっと舞って、朝の光に当たってキラキラ金色に光っていました。蜜を吸う姿はとても丁寧で、ぜんぜん急いでいません。まるで、花の中だけ時間がゆっくり流れているようでした。

その様子を見ていると、私の心臓までゆっくりと動いていくようでした。毎日バタバタしていたり、どうしたらいいかわからないことを考えていたりしたのが、遠くへ行ってしまうみたいです。ミツバチは、ただ今日の仕事をこなしているだけ。大きな計画や難しい考えなんてないみたい。ただ花を訪れて、蜜を集めて、巣に帰る。そんな当たり前のことが、こんなにも心を落ち着かせてくれるなんて、不思議です。

やがて彼は花から離れ、次の花へとひらひらと飛んでいきます。その動きは軽やかで、すごく真剣です。風が吹いて花が揺れても、それに負けないで花の真ん中に入っていく。どんな大変なことにも、彼は淡々と向き合うのでしょう。嵐の日でも、暑い日でも、きっとこの小さな羽は止まらないんだろう。

ふと庭の隅を見ると、また別のミツバチがやってきました。同じ花を訪れても、お互いを追い払うことをしません。自然のきまりを守るように、自分の順番がくるのを静かに待っています。そこには、誰かと競争したり、奪い合ったりするのではなく、必要な分だけを分け合う、そんな優しさがあるように思えました。

いつのまにか、朝の光は少し強くなっていました。羽音も聞こえなくなり、庭には花と風だけが残っています。その静けさの中で、私もまた、この小さな毎日のひとつなんだなと思い出しました。人間は大きな意味や結果ばかりを追い求めがちだが、もしかしたら、本当に心を豊かにしてくれるのは、このミツバチみたいに、一日一日を大切に積み重ねることなのかもしれません。

今日も、花が咲き、蜜がたまり、ミツバチが飛んでいく。そんな穏やかな時間の流れをただ見守っていることが、何より贅沢に感じられました。

(完)

 

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