高橋うによ
図書館にあった「親子養蜂教室」のチラシにふと、目がとまった。内容を読むと、小学校低学年でも参加できるらしい。家には、暇を持て余した息子。虫はあまり好きではないが、申し込んでみるかと、重い腰をあげた。見事抽選にあたり、猛暑日の中、息子と二人、養蜂を行っている、地域の障がい者センターに向かった。体験前に着替えを促すと、「白い服は嫌だ。かっこう悪い」と、息子はごねた。「でも、ハチにさされたら嫌でしょう」根気強く息子を説き伏せ、やっと着替えをしてもらえた。小さいときは、私が用意した洋服をなんでも着てくれたのに。この時点で、私はもう、汗だくだ。指定された白っぽい長袖、長ズボンのを着て、網のついた麦わら帽子をかぶりしっかりと結ぶ。最後に、ゴム手袋で両手もガード。緊張してきたのか、口数の少なくなった息子の背中を押し、屋上に行く。炎天下の中、無数のミツバチが飛び交っていた。希望者には、ハチの巣を持たせてくれると言う。「怖くないよ」と息子が、手をあげた。私は、怖くて持てなかった。スズメバチがミツバチの巣の前で死んでいた。「あのスズメバチは、なんで死んでいるんですか」と職員の方に尋ねた。「あれは、ミツバチを狙いに来て、ミツバチに殺されてしまったんです」と教えてくれた。「ミツバチって、すごいね」と息子に言うと、「知ってるよ。テレビで見たことあるもん」と生意気に言った。しかし、ミツバチの巣は、六角形だから最強だと説明を受けた息子は、なんで丸じゃだめなんだと、不思議そうにブツブツ言っていた。職員の方に「虫から人が学ぶことはたくさんあるんだよ、君もいっぱい調べて、発見してごらん」と言われ、息子は、神妙に頷いていた。最後に、遠心分離機を使って絞ったハチミツを瓶に詰め、お土産にし、もらえることになった。不純物が多めだが自分で絞ったハチミツと、事前に職員の方が絞った、きれいなハチミツと好きなほうを、瓶につめてよいといわれ、息子は、迷いなく後者を選んだ。「きれいなほうがいいじゃん」と、息子は嬉しそうに言った。私は、息子が絞ったハチミツも食べてみたかったなと少しだけ、思った。息子の詰めたハチミツは、今年の5月頃に作ったもので、桜の蜜が多いかもしれないとのことだった。きれいな飴色をしていた。家に帰り、無糖のヨーグルトにハチミツをかけ、食べた。息子においしいか聞くと、無言で、親指を立てた。
(完)
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