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蜂蜜エッセイ応募作品

祖母の知恵と蜂蜜のぬくもり

高鳥珠代

 

子どもの頃、体が弱かった私にとって、祖母の家は小さな診療所のような場所でした。熱を出して寝込むと、祖母は決まって台所に立ち、湯気の立つ湯呑みに蜂蜜をたっぷり溶かし込んでくれました。時には柚子をひとかけ、あるいは生姜をすりおろして加えることも。甘くやさしいその一杯は、薬嫌いの私にとって何よりも安心できる「くすり」でした。

日本では、蜂蜜はどこか「特別な甘味料」として扱われてきたように思います。欧米の家庭では食卓に当たり前のように蜂蜜の瓶が置かれ、パンやシリアルにかけて食べる姿を目にしますが、日本の食卓では砂糖や味噌、梅干しといった保存食の知恵が主役で、蜂蜜は日常から少し距離のある存在でした。だからこそ、祖母がごく自然に蜂蜜を台所に常備し、生活に取り入れていたことは、今思えばとても先見の明があったのかもしれません。

思えば「手当」という言葉もそうです。手をそっと当てるだけで痛みがやわらぐ——そんな不思議な力を、私たちは知識としてではなく感覚として受け継いできました。祖母が私の額にそっと手を置いてくれたときの安心感は、どんな薬にも勝るものでした。蜂蜜の甘さと祖母の手のぬくもり、その二つが私にとって最高の「手当」だったのです。

大人になった今、蜂蜜には免疫力を高め、疲労を回復させる力があることを知りました。けれども私にとって蜂蜜は、効能以上に「祖母のやさしさ」と深く結びついています。蜂蜜の甘さに包まれると、あの冬の畳の部屋、湯呑みから立ちのぼる湯気、そして祖母の皺だらけの手が鮮やかによみがえります。

忙しい日々のなかでも、私はときどき蜂蜜をお湯に溶かして飲みます。スプーン一杯の黄金色の雫が、心を落ち着け、身体を整えてくれる。祖母が残してくれた知恵は、今も私の暮らしに息づいています。蜂蜜は単なる食品ではなく、世代を超えて受け継がれる「手当」そのもの。その一滴には、花と蜜蜂と、人のぬくもりが溶け込んでいるのです。

(完)

 

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