はちみつ家　>　蜂蜜エッセイ

蜂蜜はおいしい家庭常備薬（補）

渡辺碧水

　同タイトルの下、七回にわたって蜂蜜の薬効等についていろいろと述べた。
　その調査の過程で知った資料であるが、学術的観点からの記述であるので、趣旨を混同させないように、あえて稿を改めて補足として引用し紹介するものである。
　日本学術会議・食料科学委員会畜産学分科会は、二〇一〇（平成二十二）年二月二日、記録『畜産物のはたす役割（食肉、乳、卵、蜂蜜）』と題する小冊子（全二十ページ）を発行した。「本資料は、日本学術会議会則第二条に定める意思の表出ではない。掲載されたデータ等には、確認を要するものが含まれる可能性がある」との注記もある。
　畜産物に関して、数多くある誤情報・誤理解を憂慮し、科学的で正確な情報と正しい畜産物の果たす役割とを整理し、消費者である国民に発信し伝える目的で記された。
　次は「畜産物の適正な摂取は人の健康に必須」の品目「蜂蜜」を抜粋・整理したもの。
　「…蜂蜜はミツバチが花蜜を収集し、糖を転化し、熟成させ、巣穴に蓄えたもので、人による加工がほとんど加えられていない天然の畜産物である。蜂蜜はそのまま利用されるだけでなく、菓子類や飲料の甘味料として広く利用されている。さらに蜂蜜は食品に甘みを加えるのみならず、特有の風味やしっとりした食感を与える。蜂蜜は食品のみならず、栄養剤、甘味剤、舐剤、医薬品や発酵酒にも利用されている。さらに蜂蜜は保湿性に富むために広く化粧液・ハンドクリームなどにも用いられている。
　蜂蜜は、約八十%が糖分（約三十八％が果糖、約三十一％がブドウ糖、その他麦芽糖などを含む）、水分が約十七％で、三%の様々な微量成分－グルコン酸などの有機酸、各種酵素類、ビタミン、ミネラルなどを含む。この微量成分が蜂蜜の持つ機能成分や風味の要因となっており、各成分割合は働き蜂が採蜜した花によって異なっている。
　蜂蜜は、糖類の吸収がよく、非常に利用しやすいエネルギー源で、栄養価も高いために疲労回復には極めて効果的である。また、蜂蜜は、民間療法で治療的用途に用いられ、その薬理も明らかにされ、現在でも医薬として利用されている。古くから創傷の際の消毒に用いられ、これは蜂蜜の持つグルコースオキシターゼによっている。また、蜂蜜はバクテリアの感染による炎症を抑える殺菌作用があり、ピノセンブリンなどの抗酸化物質を含み、火傷、皮膚炎、創傷の治療にも用いられる。その他、蜂蜜はビタミンＢ六による皮膚の健康維持効果、カリウムによる筋肉機能の調整作用、微量成分のグルコン酸などが腸内細菌の活動を促すことによる整腸作用など様々な機能性をもっている」
　他の畜産品を含めて、「畜産物のはたす役割」を正しく認識する必要がある。

（完）