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蜂蜜エッセイ応募作品

祖母の化粧水

中野 律子

 

 蜂蜜と言えば口に入れるもの。
 でも、祖母は蜂蜜を使って手作りの化粧水を作っていた。蜂蜜は万能薬、という考えがあったのだろう。蜂蜜の他に何を入れていたのかは記憶に無いが、透明で、少しだけとろんとしていた。
 「律子も塗ってごらん」
 と言われ、分けてもらうと、甘くて、親しみやすくて、ちょっぴり香ばしい匂い。確かに体に良さそうな気分になった。小学生の私は「ほんとだ、つやつやになるね。」と分かったような口を聞いていた。
 今でも、蜂蜜の匂いを嗅ぐと、天国へ行った祖母を思い出す。
 祖母は、会うたびに「律子はかたい子やね」と、言ってくれた。「かたい子」とは、富山弁で「いい子」のこと。小さいときは意味は分からなかったけれど、褒めてくれていたことは表情からすぐに分かった。何も良いことをしていなくても、祖母は褒めてくれた。
 親に反発したり学校を抜け出したり、祖母のいう「かたい子」のまま育ったとは言い難いけれど、祖母に愛された記憶のおかげで、大きく道を外さずに来られたと思う。
 私は蜂蜜で化粧水は作らないけれど、自分の子供たちには精一杯、愛されたという記憶を与えていきたいと思う。

 

(完)

 

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