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蜂蜜エッセイ応募作品

メキシコのおばあちゃんのプロポリス

ホセ

 

 10年ほど前までメキシコに住んでいた。学生時代をグアテマラで過ごし、そのまま縁あってメキシコの旅行会社に就職し、現地の観光ガイドとして働いていた。2~30人の旅行者を観光名所に連れていき案内をする仕事である。
 ある日、長距離ツアーの途中でのこと。休憩で立ち寄った山あいの集落で、現地の先住民らしいおばあちゃん達に取り囲まれた。彼女達はみんな小柄で褐色の肌。顔には深い皺。赤や青の原色の糸で細かく刺繍が施された大きなスカートと、着膨れするほど重ねて着た同じく原色の上衣、白いエプロンのいでたちである。両手には小さな籠を持ち、「買え買え」と連呼してこちらに差し出してくる。
 籠を覗くと、黄色の液体が満ちたプラスティックのチューブが数本と茶色の薬瓶が数本ある。彼女達は「miel(蜂蜜)とpropolio(プロポリス)だ」と言っている。ただ、当時の私はplopolioなどという単語はおろか、プロポリス自体を知らなかった。
 彼女達は「試食だよ。食べてみて」と四方八方から液体を付けた木片を差し出してくる。恐る恐る口にすると明らかに蜂蜜の味ではない。甘くない。苦い。ピリピリする。まんまと騙された。じりじりと照りつける太陽の下、得体の知れない物を口にした後悔と苛立ちと焦りに、顔が紅潮して汗がどっと吹き出た。リュックに入れた水のペットボトルをパニックになりながら引っ張り出して、唾を吐き、うがいを繰り返す。それまで豪快に笑いころげていた彼女達が、急に悲しそうな表情に変わったのを私は気づいていた。
 それが私の生まれて初めてのプロポリス体験であった。当時はプロポリスがどれほど貴重で、どれほど収穫が困難で、どれほど栄養価が高いか、知る由もなかった。
 自分自身が無知であるがゆえに彼女達に嫌な思いをさせてしまった後悔の思いは今も消えていない。それと同時にプロポリスをもっと多くの人に知ってもらいたいと思っている。

 

(完)

http://www.ribbon-npo.com/

 

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