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ミツバチと共に90年――

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蜂蜜エッセイ応募作品

蜂蜜は人命救助

はる

 

 積雪3メートル。
 かんじきを履いて山頂を目指す。スキーをかつぎ6時間かけて雪山を登り、そして一気に滑り降りる。山スキーは子どものころから生活の一部だった。
 私は北海道北部の山の中で生まれ育った。子どものころはテレビも映らず、家族だんらんの楽しみは、雑音交じりのラジオ。
 エゾシカ、キタキツネ、タヌキ。野生の動物がいつも身近にいた。スキーができる冬場は、動物たちにスピードで負けることはなかった。ヒグマのすぐ横を、スキーで駆け抜けたこともある。
 市販のお菓子など食べたことがなく、自宅で取れた小麦粉に卵を混ぜて焼き、蜂蜜をかけて食べる自家製ホットケーキが唯一のおやつだった。
 地元の高校を卒業し札幌に就職を決めたときは、誰もが心配した。都会には見たことも聞いたこともないカタカナの食べ物があふれているが、母が焼いてくれる自家製ホットケーキが一番好きだ。
 都会暮らしも8年目。冬山好きは変わらず、時間があれば山スキーをするため冬山に登っている。
 2月の冬山、滑っているときに舞い上がる雪で視界がゼロとなり、私は沢に転落した。木の枝に引っ掛かり川の手前で助かったが、スキー1本とリュックは流されてしまった。日没の時間なので、その場でビパークすることにした。食料はポケットに入れていた蜂蜜の小瓶だけである。
 「何とかなるべ」自分に言い聞かせて、夜明けを待った。
 翌日は猛吹雪で、身動きが取れない。体力を温存するためじっとしている。
 次の日も猛吹雪。雪を食べ水分を補給し、蜂蜜を少しずつ舐めて気持ちを落ちつけた。
 三日三晩雪穴で冬眠し、そして四日目の朝、吹雪の止み間を見計らって、かんじきを履いて沢を登りきった。新雪は雪崩が起きやすいので、ゆっくり下山した。
 蜂蜜がなければ、私は凍死していた。蜂蜜が私の命を救ってくれたのである。
 帰宅後、小麦粉に卵を混ぜて自家製ホットケーキを焼いた。
 蜂蜜をたっぷりかけて、
 「いただきまーす」

 

(完)

 

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