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蜂蜜エッセイ応募作品

思いがけない贈り物

奈子

 

 久しぶりの母からの電話は、癌が再発したという知らせだった。しかも、リンパに転移しているという。すぐに再手術が決まった。再手術の日は暑い夏の日で、祈るように待つだけの時間を過ごした。手術は無事成功しほっとしたのも束の間、続けて抗癌剤治療が始まった。髪が抜け、痩せていく母を見るのはとても辛かった。そんな時、突然、実家に贈り物が届いた。それは友人Sの「お母さん」からだった。
 Sは大学の同期で、卒業後も仲のいい友人だ。実は、Sのお母さんも母と同時期に癌がわかり、闘病を続けていた。癌を患う家族を持つ人間として何が出来るか、何をするべきかといった事を、共に考えられる唯一の友人がSであった。今回の再発の事も打ち明け、励ましをもらっていた。
 突然の贈り物に私達は驚いた。Sのお母さんと母は直接会ったことがない。それにも関わらず、古い友人の様に温かい贈り物をくれたのだ。箱を開けてみると琥珀色の蜂蜜の瓶が現れた。その蜂蜜には手紙が添えられていた。この蜂蜜は「地蜜」と言われ、とても体に優しいということ。そして、母の快復を心から祈っていることが書かれていた。
 母と私は感動した。家族以外で、母の病気をそこまで思ってくれる人は、今までいなかった。瓶を手にとった母は笑顔になった。「早く食べてみたい。」、と少し興奮しているようだった。沈みがちだった母が、少し明るくなったような気がした。
 後にSに聞くと、Sのお母さんは自分自身の経験から、母の今の痛みや苦しみを理解し、少しでも助けになりたいと思ってくれたそうだ。そこで、自分が産地から取り寄せている、栄養価が高いと言われる蜂蜜を贈ってくれたのだ。
 それから母は毎日少しずつ大切に、その蜂蜜をお湯で溶かして飲んでいる。食欲がない日も、その温かい飲み物はすっとのどに通るようだ。真心のこもった蜂蜜の力なのか、母はどんどんと元気になっている。

 

(完)

 

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