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蜂蜜エッセイ応募作品

スプーン一杯のお薬

睦月 カンナ

 

 少し前に目にしたニュースで、ふと、幼いころの記憶がよみがえってきた。
 それは「ネットの離乳食レシピにハチミツが使われていた」というもの。たしかに危ないなとニュースの内容にうなずきながら、同時に、自分はどこで「赤ちゃんにハチミツを与えてはいけない」と知ったのだろうとふり返った。
 そして思い出した。昔のこと。
 カゼをひいてノドを痛めた時、大きなビンから母が掬ってくれたのは、スプーン一杯のハチミツだった。
 「これをなめたら良くなるからね」
 それはまるで魔法の一言。甘くておいしいハチミツが、お薬に変身する。
 「でも、一口だけね。食べすぎちゃダメ。ハチミツはとっても強いから。だから赤ちゃんには食べさせちゃいけないんだよ」
 母の言葉にうなずきながら、わたしはハチミツを味わった。
 ノドが痛い時にだけなめられる、特別な、スプーン一杯のハチミツ。とろっと黄金にかがやく、甘いお薬。けれども実は、とっても強い。
 それは、優しい記憶とともに刻み込まれている。

 

(完)

 

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