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母と私と高価なはちみつ

はーてぃ

 

 中学生のころまで、私は喉が弱かった。
 2か月に1度は扁桃腺を腫らし、耳鼻科に通っては薬をもらって凌いでいた。

 そのくせ、私は声を出すのが大好きだった。友達とのカラオケ、運動会の応援団、英語のスピーチ大会。特に、大事なイベントの前は絶対に喉をダメにしてはいけない、と、中学生なりに努力をした。躍起になってのど飴を買い漁り、夜もマスクをつけたまま眠った。そんな努力もむなしく終わることも多々あった。耳鼻科で扁桃腺を切る手術も勧められたが、そこまでの勇気は出なかった。

 中学3年生、私は、英語スピーチの全国大会に出られることになった。喉を腫らしてはおしまいだ。だからといって、のど飴とマスク以外にできることもない。

 元気に当日を迎えられるかひやひやしていたある日、母が、デパートではちみつの瓶を買ってきた。「喉に良いねんて。これ、高かったんやで」

 高いとはいえ所詮ははちみつだ、と、少々ナメながら、私はそれを舐めた。今までに口にしたことのない、どろっとした粘り気が、喉を覆う。これはもしかすると本当に良いのかもしれない。半信半疑で、私は毎日スプーン1杯のそのはちみつを口に運んだ。

 全国大会当日、喉は今までにないほど絶好調だった。となると、この「高価なはちみつ」に俄然興味が湧く。瓶が空になったとき、デパートに行く母についていった。

 マヌカハニー、というそのはちみつは、売り場の中でも少し高めの壇に鎮座されていた。母がその中でも、蓋に書かれている値が一番大きいものを迷わず手に取ると、販売員の男性が問いかけた。「娘さんにですか?」母が、はい、と答えると、彼は私に微笑んでこう言った。「とても幸せなお嬢さんですね!」

 当時は「喉に良いはちみつ」程度に考えて毎日美味しく舐めていたが、最近になって、蓋に記載されている「MGO」という値が大きいほど高価で、抗菌作用も強いということを知った。

 あの、MGOの大きなマヌカハニーは、喉の守り神である以上に、母の愛であった。一人暮らしを始めた今も、母の愛はときどき、実家からの段ボールで送られてくる。

 おかげで中学三年生のあの頃からの10年、私は扁桃腺を腫らしたことがない。

 

(完)

 

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