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母のレモネード

むろいあきこ

 

 小さい頃、我が家では毎朝母がレモンを絞って、父も母もクイっと飲むのが習慣だった。ガラスのレモン搾りで、半分に切ったレモンをキュッキュッと、母が搾る。それを見るのも好きだった。しかし、小さい私は出来あがったレモン汁は苦手だった。あまりの酸っぱさに思わず顔をしかめてしまう。すると、母がはちみつををたっぷり入れてくれた。さっきまでの恐ろしく酸っぱいレモンジュースは、甘くて美味しいレモネードに変身した。
 少し大きくなると、そんな酸っぱいレモンにもなれ、母のレモネードは登場しなくなった。私もすっかりレモネード、またその味を忘れてしまっていた。
 大学を卒業して総合商社に就職した私は、同期の男性と結婚、男の子を出産し、夫の駐在を機に退職して、ニューヨークに住む事となった。実際に住んだのは、お隣のニュージャージー州の端正な街だった。緑に囲まれたその街は、マンハッタンから車でわずか30分の所だったが、その自然の豊かさには驚かされた。庭にはリスが走り回り、茶色のうさぎがちょこんと座っている。スカンクにも遭遇する。
 夏になると、子供達の声が元気に聞こえてくる。「ああ、夏休みなんだ。」と思っていると、ある日、家の前の道にレモネード屋さんが出現した。良く見ると、売っているのは子供達だった。私は早速息子を連れて、買いに行った。息子の分と2杯お願いすると、10歳ぐらいの金髪が綺麗な女の子が、嬉しそうにレモネードをグラスに入れてくれる。どうやら、売り上げはお小遣いになるらしい。
 何年振りだろうか、レモネードを飲むのは。久しぶりのレモネード。ひと口に飲むとと、爽やかなレモンと甘いはちみつがたっぷりと口じゅうに広がった。と同時に、小さい私が、突然甦った。
 「母のレモネードだ。」父と母と3人で、食べた朝食。酸っぱいレモンに美味しいはちみつを入れる。懐かしくて、暖かい幸せの時間が流れていた。
 ああ、はちみつ。甘くて美味しい、きらきらの黄金色のはちみつ。そうだ、それは、私にとって幸せの魔法だった。そう思うと、何だかとても嬉しくなって、私は早速、スーパーにはちみつを買いに出かけたのだった。

 

(完)

 

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