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蜂蜜エッセイ応募作品

人生のピンチに蜂蜜

穂乃香

 

 歩きの四国遍路に出かけたのは宗教的な発心からではない。歩くのが好きな友と私の、歩く旅と言えばお遍路だよね、いろいろガイドブックもあるし、四万十川とか道後温泉とか観光地もあるし、おいしいものもありそうだしと、いたって俗っぽい理由の遍路旅だった。半年に一度、四国に出かけて遍路道を歩いた。
 1400キロの長い遍路道の中に、長く険しい山坂を超えていく「遍路転がし」と呼ぶ難所が何か所がある。その一つを行った時のこと、疲れたしお腹がすいたしと、人気のない山道に座り込んでしまった。
 そういえばと、何気なく持ってきた小さな瓶の蜂蜜をリュックから取り出して、パンにつけて食べた。
 古い例えであることを重々承知で言うのだが、幼い頃見ていたポパイのアニメでは、ピンチに陥るポパイがほうれん草の缶詰を開けて食べると、ファンファーレが鳴って元気もりもりになって無事ピンチを切り抜ける、あの場面の通り、私の体の中でファンファーレが鳴ったような気がした。
 蜂蜜が五臓六腑にしみわたり、細胞の一つ一つが元気になって、体全体に力が蘇るようだった。再び歩き始め、やっとやっと宿に着いた時には、万歩計は4万歩近くを示していた。
 遍路宿の女将さんは、宿に着いた時の疲れ具合で、その人が人生で背負っているものの大きさや重さがわかると言った。足を投げ出しげんなりしている私たちを見て、「あんたたちなんか、たいしたもの背負ってないよ」と笑って言われてしまった。
 きっとそうなのだろう。疲れに疲れている人はこんなものではないらしい。女将さんの見立てを全面否定するつもりはないのだが、そう感じさせたのは蜂蜜のお蔭もあるのだ。人生で背負っているものを少し軽く感じさせる力が、蜂蜜にはあるのだろう。
 背負う荷が重く感じられる時、疲れて歩くのが嫌になった時、蜂蜜が威力を発揮するはずだ。長い人生でいつ必要になるかわからない。かたわらに蜂蜜を置いておこう。人生のピンチに効く蜂蜜だ。蜂蜜万歳。

 

(完)

 

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