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蜂蜜エッセイ応募作品

百花の世界へ

平山正浩

 

 私は長い間、この世にある事物は純粋なものや混じり気のないものがいいものだと思っていた。「純粋」「ピュア」という言葉の美しさに惹かれ、その語感に清々しさや一途でひたむきな雰囲気を感じていた。それが事物の持つ最良の状態だとずっと思っていた。
 だが、世の中を見渡せばそうでもない物がたくさんあるということが分かってきた。例えばコーヒー。コーヒーにはモカやコロンビア、キリマンジャロといった一種類の豆のみで焙煎されたストレートコーヒーと、それらを混ぜ合わせて作ったブレンドコーヒーがある。ストレートで飲んでそれぞれの豆の個性を確かめるのもいいのだが、豆を混ぜ合わせる加減によって味わいに微妙な違いが出るブレンドの味作りにコーヒー焙煎の醍醐味があるという。例えばウイスキー。単一の蒸溜所で作られるシングルモルトウイスキーに対して、複数の蒸溜所のウイスキーをミックスして作られるのがブレンデッドモルトウイスキーだ。蒸溜所の拘りがそのまま反映されるシングルモルトウイスキーに対し、ブレンデッドモルトウイスキーは様々な蒸溜所の特長を絶妙に配合しバランスのとれた味や香りを追求していく。
 そして蜂蜜。コーヒーやウイスキーに比べ、私は蜂蜜を口にする機会が少なく、恥ずかしながらこの歳になるまで蜂蜜にも「百花」というまさにブレンデッドな世界があることを知らなかった。クローバーはちみつ、アカシアはちみつ、レンゲはちみつ、蕎麦はちみつ・・・こうした1種類の花から採れる蜜を単花蜜という。そしてその対義語としての百花蜜は、野山やその一帯に咲く様々な花の蜜を集めて作られたものだ。百花は地域や季節によって移り変わっていくので、採れる百花蜜も時期によって異なる味わいを楽しむことができるとのこと。そこには単花の持つ個性的な味わいとはまた違った百花ならではの特徴、味わいがありそうだ。
 ひと粒のコーヒー豆、ひと樽のウイスキー、いち輪の花の蜜にそれぞれ固有の味わいがある一方で、多くのものが集り、混じり合って生まれる新しい味にもまた独自のものがある。このことは人間の世界にも言えるのではないか。ピュアとピュアを混ぜ合わせて全く新しいブレンデッドな味が生まれるように、人間も多くのピュアな個性が集えば、そこに新しい考えが生まれ、異なる価値観が育ち、多様性を認め合う新しい社会が出来るのだろう。ピュアの良さと、混じり合うことの良さ、それぞれの良さをまさに多面的に認め合える百花の世界になればいい。

 

(完)

 

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